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こんにちは。
「夢と読書 一期一会BOOKS」の萌菜花です。
今回わたしが読んだ本は『レンタルなんもしない人のなんもしなかった話』レンタルなんもしない人(晶文社)です。
みなさんはレンタルなんもしない人さん(以下「レンタルさん」と呼びます)をご存じでしょうか? レンタルさんは、2018年に「ただ一人分の人間の存在だけが必要なシーンに自分を貸し出す」という画期的なサービスを始めた方です。
この本はそんなサービス開始から、日本テレビの「スッキリ」に出演するまでの半年間のTwitter(現X)のツイート(ポスト)をまとめた一冊です。
さらに、この本には続巻があります。
このサービス、そんなに需要があるのかな? 採算はとれるのかな? どんな人がしているのかな? とすごく気になっていました。
なぜレンタルさんが気になったのかというと、レンタルさんを元にしたドラマの存在を知ったからです。2020年に放送されたこのドラマは円盤化されています。
よくよく調べると漫画化もされているようで、全1巻が発売されています。読みやすくていいですね。
また、スッキリ以外のテレビ番組やラジオ、Web番組にも出演されており、現在も活動を続けられています。
皆さんがレンタルさんをレンタルするとしたら、どんなことをしますか?
ちなみに、レンタルさんはごく簡単なうけこたえしかしてくれません。できないことやしないことも少なくありません。気分でキャンセルされることもあります。
それじゃあできることなんて限られるのでは……と思った人もいるでしょう。しかし、世の中には人の数だけレンタルさんを求める理由があります。
今回はそんな「なんもしないサービス」でスッキリに出演しちゃったほぼ実話なこの本の概要・感想・実際のサービスについてを紹介します。
- 『レンタルなんもしない人のなんもしなかった話』のあらすじ
- 『レンタルなんもしない人のなんもしなかった話』とレンタルなんもしない人さんについて
- 『レンタルなんもしない人のなんもしなかった話』の感想
- レンタルなんもしない人のサービスの利用方法は? 支払う金額も紹介
- 『レンタルなんもしない人のなんもしなかった話』のまとめ
『レンタルなんもしない人のなんもしなかった話』のあらすじ
2018年6月3日、「レンタルなんもしない人」というサービスがスタートした。
その名の通り、彼は「なんもしない」。
人一人分の存在だけが必要な人に向けたニッチなサービスである。
料金は、東京都国分寺駅からの交通費とかかった飲食代だけ。
このサービスはみるみるうちに反響を呼び、フォロワーや利用者が増え、たった半年で日本テレビ「スッキリ」に取り上げられるまでに。
本書は、そんな著者のサービス開始時からの半年間をまとめたノンフィクション・エッセイである。
『レンタルなんもしない人のなんもしなかった話』とレンタルなんもしない人さんについて
『レンタルなんもしない人のなんもしなかった話』
定価:1,300円+税
2019年4月20日 初版
(株式会社晶文社)
レンタルなんもしない人
1983年生まれ。既婚、妻子持ち。
理系大学院卒業後、数学の教材執筆や編集などの仕事をしつつ、コピーライターを目指すも、方向性の違いからいずれも撤退。現在は「レンタルなんもしない人」の仕事に専従している。
この仕事がきっかけとなり、Web番組やラジオ、テレビに取り上げられ、2023年8月には配信限定シングルも発表している。
本書は著者の最初の本である。
本人を題材にし、2019年には漫画化、2020年にはドラマ化している。
現在X(Twitter)のフォロワーは40万人を超え、現在も活動を続けている。
『レンタルなんもしない人のなんもしなかった話』の感想
1 レンタルなんもしない人の上手? 個性的? でバリエーション豊富な利用方法
レンタルさんのサービスは「友達」じゃなくて、「家族」でもなくて、「知り合い」でもない「なんも関係がない他人」の存在が必要な人に向いています。
運転や公共交通機関以外の移動、おつかい、荷物の受け取り、犬の散歩、不貞行為にあたること、危険が伴うことは基本できません。また、その時々でできないことが変わり、すべてはレンタルさんの独断で決められます。
と、なると、お客さんは何を頼んでいるのでしょうか。
この本の中で紹介されていた依頼は、とても個性豊か。わたしではとても考えもつかないものが多く、うまくレンタルさんを利用している人、寂しいから利用する人、とその理由は様々です。
たくさんの依頼の中で、わたしが面白い! と思ったものを一部紹介します。
- 応援してほしい
- もう一人の私になってほしい
- 約束があることにして当日断ってほしい
- 引っ越しするので見送ってほしい
- お金(あるいはギフト券、プレゼントなど)を受け取ってほしい
- 自分のことを一瞬だけ思い出してほしい
- 自分の第一印象を教えてほしい
- 結婚式を眺めに来てほしい
- ブランコを漕ぐので見守ってほしい
- 離婚届の提出に同行してほしい
とてもバラエティに富んでいますよね! どれも個性的で、地味なものから人生の大事な瞬間の立ち合いまであり、シンプルなサービスなのにこれほどバリエーションがあるのかと驚きました。
また、レンタルさんの呟き方は淡々としていて、その人の人生の一瞬にそっといただけ、という感じがするのが面白いです。大体は「食わされました」など、受け身な書き方をしているのに、嫌な感じがしないのも不思議です。
他にも独特で面白い依頼がたくさんありましたが紹介しきれないので、上記の依頼の詳細も含めて、気になる方は読んでみてください。
逆にポピュラーな依頼は以下の通りです。
- 席を埋めてほしい
- 一緒に飲食店に行ってごはんを食べてほしい、同行してほしい
- 推しを布教させてほしい
- 指定した返事を返してほしい
- ただ話を聞いてほしい
- サボらないようにただその場にいてほしい
「席を埋めてほしい」に関しては、自分の代わりに舞台などを見てほしいというものと、ゲストとして客として来てほしい、というものがあります。
また、「一緒にごはんを食べてほしい、同行してほしい」というのは、寂しいから一緒に来てほしい、とか、一人では入りにくいから来てほしい、とか、良さを知ってほしいから来てほしい、とか、2人以上でないと予約ができないから来てほしい、とか、様々な理由で基本「なんもしない」レンタルさんただ一人の存在を必要としていることがわかりました。
このように、なんもしない存在を必要としている人は思ったよりもはるかに多く、多い日で1日2~3件依頼をこなすこともあるようでした。
今はもっと多くの依頼をこなしているようです。
2 レンタルさんの家族――寛大なパートナーさんと幼い息子さん、親御さん
こんなに独特なお仕事を格安(東京都国分寺駅からの交通費とかかった飲食代だけ)でされていると、食べていけているのかな? と疑問に思ってしまいます。
この本を手にするまでレンタルさんの家族構成は知らなかったので、妻子持ちだということに、最初はとても驚きました。
そして読んでいくと、息子さんは当時0歳。そんな大変な時期によくこの仕事をはじめることを許してもらったな、とこころの広いパートナーさんに感服しました。
本の中ではちょこちょこご家族の話題も出ていて、一緒に鍋を囲んだり、家事や息子さんのお世話をしたり、パートナーさんのコミティア出展に同行したりと、仲の良い家族関係なんだなとほっこりしました。
しかし、レンタルさんの親御さんとはこのお仕事をきっかけに距離ができてしまったようです。その後、テレビやラジオに出演し、漫画化やドラマ化もされ、X(Twitter)のフォロワーが40万人を超えているいま、少しは改善されていればいいのにな、と思うばかりです。
とはいえ、家族だからこそ反対したり、失望するのはとても良くわかります。わたしだったら一度は止めます。ただ面白そうだなとも思うので、相手を養えるだけの財力があれば、肯定できるかもしれません。
当時のレンタルさんの客層は、意外にも女性の方が多いようでした。
たしかに、男性は一人で行動できる人が多いイメージですが、女性だと防犯面の懸念もあり、一人ではむずかしいことが男性に比べて多いのかもしれません。
そこで、レンタルさんが「妻子持ちであり、不貞行為にあたることや危険なことはしない」と最初に明言したことで、女性からの信頼を得たのではないかと推測します。
知らない第三者に同行をお願いすると、一対一の状況になることもあります。そんなとき、信頼できるひとでないと、なかなか頼みにくいですよね。それに、レンタルさんは最低限の受け答えしかしないので、変に気を使う必要もなく、利用料も当時は最小限(現在は変更されています)だったので、利用へのハードルが女性でも低かったのではないかと考えられます。
レンタルさんの家族の存在で、レンタルさんの私生活や思わぬ一面を知ることができ、信頼を得ることにつながったのだと思います。
意外とレンタルさんって人間味があって、そこが好感度を上げる要因であると思うんですよね。
3 レンタルさんがここまで発展したのは、「ちょうどいい距離感の人」だから
現在、レンタルさんを真似して「レンタルなんもしない人」は驚くほど各地にたくさんいますが、本家ほどの知名度はないようでした。
本家でありテレビ番組やラジオ、Web番組やイベントに多数出ているから知名度が高いと言えますが、それだけはお客様は集まりませんし、リピーターは生まれません。
どうしてここまでたくさんの人に愛されているのかを考えると、それはレンタルさんが「ちょうどいい距離感の人」だったからではないかと思います。
レンタルさんは知人や家族や友人のような馴れ馴れしい近い距離感ではなく、さりとて全く愛想がないわけでもない。ちょうどいい「他人」あるいは「第三者」の距離感を保てるのです。これって、実は難しいことだと思います。
わたしは以前介護職をしていて、利用者さんとご家族との関係を考えてしまったり、利用者さんやご家族に感情移入してしまったことが何度もあります。
しかし、レンタルさんは、
「重い話を聞くとそれに引きずられて精神的につらくならないですか?」とよく聞かれるけど、そういう感覚がないのでこの活動向いてるんだろうなと思います。
と言われていました。
傾聴は共感することではないと習ったことがあるのですが、それを実践するのはとても難しいです。それに、何も言わずにただただ話を聞く、というのも難しい。ですが、レンタルさんはそれが自然とできているのだと思います。
この本はレンタル開始時の半年間のツイート(ポスト)をまとめたものですが、レンタルさんの文章には「!」がとても少なく、冷静な印象を受けます。それと同時に興奮や怒りの感情が見えないので、誰に対しても平等に接しているのだなと感じられます。
ただし、レンタルさんが丁寧な対応をしているかといえば、そうではありません。レンタル中に帰ってしまった事例もありますし、依頼を断るときは誰に対してもちょっと失礼な感じの返事をされます。あと本書ではたびたび遅刻もしています。
にもかかわらず、怒られることはほとんどなく、自然と受け入れられているのは、レンタルさんの人柄でもあり、ただ素直に人と接している結果なのではないかと思います。
以前、心屋 仁之助先生、マンガ:横山 裕二先生の『「非常識」でコミュニケーションはラクになる』(株式会社KADOKAWA)を紹介しましたが、ここで心屋先生がおっしゃっていたことと、レンタルさんがしていることは非常に近いと感じます。というかそっくり。素直に人と接することで、人々に受け入れられているのだと納得しました。
レンタルさんのやり方はプロ奢ラレヤーさんをパクったものだとおっしゃっていましたが、わたしは西野 亮廣さんの『魔法のコンパス』(株式会社 主婦と生活社)で紹介されていたホームレス小谷さんにも近いなと思いました。
ホームレス小谷さんはSNSで仕事を受け、利用料は破格の50円。信頼を得た彼は結婚式を挙げるためにクラウドファンディングを行い、わずか2週間で250万円を集めた人です。
なんとなくレンタルさんの家族構成を知っていて、レンタルさんを好意的に受け入れられると、「交通費と食事代だけでは申し訳ないから、少しでも家計の足しになったら」というような心境になりやすいのかもしれません。
『「非常識」でコミュニケーションはラクになる』のなかでも、
大切なのは、相手に「助けてあげたい」と思わせる隙をつくること
と心屋先生はおっしゃっていました。
消去法で自分のできることだけに特化し、はじめから『ごく簡単なうけこたえ以外なんもできかねます。』と弱みを見せる。それから自分で依頼を選別することで、嫌な仕事をしなくて済み、なおかつ感謝されるのでモチベーションが保つことができる。
まさにレンタルさんにとってこの仕事は「天職」だと思います。
レンタルなんもしない人のサービスの利用方法は? 支払う金額も紹介
サービス開始当初は「東京都国分寺駅からの交通費とかかった飲食代」のみで依頼を受けていましたが、時代の流れや諸事情によって依頼料が変化し、現在の依頼料は【自由】になっています。
そのため、自分の気持ちやお財布事情を考えて支払うことができます。
また、料金の渡し方はいろいろで、現金で渡す人もいれば、ギフト券などのデジタルな方法で渡す人もいるようです。
依頼の方法は、X(Twitter)、InstagramのDMから。
DM内で完結する依頼でも受けてもらうことができますが、その場合は原則交通費ももちろん飲食代もかかりません。【自由】と言われたらじゃあ払わなくていいや! と思う人もいるのでしょうが、何か気持ちを返さなくては、と思う人もいるでしょう。それは自分で決めていいのです。
こんな依頼でもいいのかな? と不安になった人は、出版されている本やX(Twitter)やInstagramを見てみてください。それでも判断ができなかったら、思いきってレンタルさんにDMを送ってしまいましょう。都合がつかなかったり、難しいものはお断りされます。
また、いつも都内にいる、とは限らないので、レンタルさんの予定がわかれば把握しておくと良いでしょう。
この本の中では『だいたい二週間先までなら約束できると思います。』と書かれていたので、あまり早すぎてもいけません。キャンセル状況はX(Twitter)で随時更新されているので、事前にチェックしておきましょう。急な依頼でも受けてくださる場合があります。
『レンタルなんもしない人のなんもしなかった話』のまとめ
こんな自由な仕事があっていいのか! とわたしの中で話題になった『レンタルなんもしない人のなんもしなかった話』。
実は、本になったきっかけも『本を書いてみませんか』という依頼からでした。
一つの物事(今回の場合はお仕事)を長く続けるには、お金ややりがいだけではなくて、面白さ、つまり「飽きないこと」も必要だと思います。その点で言えば人の数だけ依頼があるこのお仕事はとても良いお仕事です。それに、誰でもできるお仕事ではありません。
「なんもしない」ことのプロ、レンタルなんもしない人さんがレンタル業をはじめた頃の半年間の呟きを収録したノンフィクション・エッセイ。
気になる人はぜひ読んでみてください。
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