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【感想】『三千円の使いかた』原田 ひ香(中央公論新社/中公文庫)❝人は三千円の使い方で人生が決まるよ、と祖母は言った。❞

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 いま、お財布に三千円が入っているとします。

 あなたは何に使いますか?

 

 こんにちは。

 「夢と読書 一期一会BOOKS」の萌菜花です。

 

 いきなり心理テストみたいなことをしてしまいましたが、今回紹介する本を読むと、この質問の意味がわかると思います。

 

 わたしがこの本を読んだのは年末で(注・『縁結びカツサンド』を先に投稿したかったので記事を書く順番を入れ替えました)、「三千円」と聞いて脳裏に浮かんだのは、「忘年会の料金」でした。

 お酒をほとんど飲まないわたしにとって、三千円は決して安い料金ではありません。

 もっとコース料金の高い居酒屋も多く、他の参加者いわく、三千円は安い方なのだとか。

 普段の飲食代を考えたら高いですが、楽しい時間が過ごせたので気持ちよく三千円を払うことができました。

 

 今回紹介する『三千円の使いかた』原田 ひ香(中央公論新社/中公文庫)では、様々な「三千円の使い方」が出てきます。

 御厨(みくりや)家の祖母、母、子ども(姉妹)を中心に描かれているので、どんな世代の人にも当てはまるお話になっています。

 それから、意外と知らない家計簿の歴史や、お金の使い方を学ぶことができます。

 

 

 

 

『三千円の使いかた』のあらすじ

 

「三千円くらいの少額のお金で買うもの、選ぶもの、三千円ですることが結局、人生を作っていく、ということ」

 

 そんな祖母の言葉を思い出し、節約をはじめた一人暮らしの美帆(みほ)。

 美帆に堅実な節約方法を教える、夫と娘と一緒に暮らす美帆の姉・真帆(まほ)。

 一千万円の貯金をし、老後のため誰かのために働きたいと仕事を探す美帆の祖母・琴子(ことこ)。

 琴子の園芸友だちで、定職につかない彼女持ち、安生(やすお)。

 自身の入院や友人の離婚を機に夫との関係を考え始めた美帆の母・智子(さとこ)。

 

 結婚や入院、子育て、老後など、人生の節目やピンチと、お金は切っても切れないもの。

 御厨家の女性(+安生)は、これらのピンチをどう乗り越えるのか⁉

 

 お金がないと幸せになれない?

 お金を貯めたいけどどうしたらいいかわからない……。

 そんな人でも、登場人物の誰かに共感でき、お金に対する知識が深まり、節約や貯金に対する意欲が湧く、「節約」家族小説。

 

『三千円の使いかた』と原田 ひ香さんについて

 

 

 『三千円の使いかた』

 

 著者:原田 ひ香(はらだ ひか)

 定価:700円+税

 発行日:2021年8月25日 初版発行

 (中央公論新社/中公文庫)

 

 原田 ひ香(はらだ ひか)

 

 1970年神奈川県生まれ。大妻女子大学文学部日本文学科卒業。

 2006年「リトルプリンセス二号」で第34回NHK創作ラジオドラマ大賞受賞。

 2007年「はじまらないティータイム」で第31回すばる文学賞を受賞し、同タイトルが単行本化される。

 その後、『人生オークション』(講談社)、「三人屋」シリーズ(実業之日本社)、「ランチ酒」シリーズ(祥伝社)など多数の著書を生み出している。

 

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『三千円の使いかた』の感想

1 「三千円の使いかた」は人それぞれ!意外と三千円あればなんでもできる

 

 本のタイトルであり、章のタイトルにもなっている三千円の使いかた」は、この本を読むうえで重要なキーワードになっています。

 

 このお話は、美帆が中学生の時祖母の琴子に言われた言葉を思い出したところからはじまっています。

 その言葉は、「三千円の使い方で人生が決まるよ」という一言。

 この本の中にはそんな人生を決める「三千円の使いかた」がいくつも出てくるので、一部をご紹介します。

 

  1. マクドナルドと本代
  2. セミナー料
  3. ファイナンシャルプランナー(FP)への相談料

 

 モノを買ったり、誰かと楽しむために使うのもいいですが、セミナーなど自分を高めるためにお金を使うのもいいですね。

 

 この本の中では、それとは逆に、「三千円を生み出す方法」も出てきます。

 つまりは貯金や節約をして三千円を生み出し、有意義なことに使うのです。

 これが一桁違って三万、となると一気にハードルが上がるので、「三千円」というのは読者も真似しやすい絶妙なラインだなと思いました。

 

 この三千円を毎月貯めると、年間で三万六千円にもなります。

 これだけあれば、小旅行に行ったり、ちょっといいものを食べたり、買ったり、もちろん貯金に回したり、資産運用に回したり、いろいろな使い方ができます。

 

 ちなみに上記に挙げた3種類の使い方をしたのは、1が中学生の頃の美帆、2が節約をするためにセミナーに参加した大人の美帆、3が自身の入院や友人の離婚を機に家の貯金のことを相談しに行った美帆の母・智子です。

 

 みなさんはこのなかでどれか共感できるものはあったでしょうか?

 わたしは、この3種の中では、1に共感しました。

 なぜなら、中学生のとき、お小遣いが三千円だった(と思う)からです。

 服を買っておしゃれをしたいのに、このお小遣いでは到底買えなくて、古着屋さんやしまむらなどの安いお店で服を買っていました。

 得に冬物のアウターを買うのに苦労した記憶があります。

 

 こんな感じで、この本のなかの誰かに、きっとみなさんも共感することでしょう。

 

2 どの世代のどんな人でも刺さる⁉人々の「あるある」を満載した登場人物たち

 

 このお話の解説は、なんと『老後の資金がありません』(中公文庫)柿谷 美雨先生です。

 こちらもリアルな老後の金銭事情をありありと書いていて、日本人に老後ゆっくりする時間はないのかもしれない……でも希望はある! と思わせてくれた力強いお話でした。

 そんな先生すらも、

 

 この物語は、全ての世代の心に響く構成となっています。

 

 と言うほど、この本は「あるある」感が満載で、誰もが共感できる登場人物が出てきます。

 

 この本は第6話構成で、美帆、美帆の姉・真帆、美帆の祖母・琴子、琴子の園芸友だち・安生、美帆の母・智子の視点で描かれています。

 年齢や家族構成、職業がさまざまなので、きっと読んでいるうちにこのなかの誰かに親近感を抱くようになるはずです。

 

 わたしが共感したのは、節約をしはじめた美帆と、定職についていない安生でした。

 美帆は私と同じようにブログをしているところや、これから節約をはじめるところに親近感が湧き、安生は将来結婚や子どもを育てることへの考えが似ていると思いました。

 

 安生は、子どもを育てることに不安があり、

 

 子供を持つことを否定もしないし、もちろん、非難もしない。でも、子供なんて、お金も手間もかかる。そんなに手間をかけて育てたところで、まっすぐに育つかどうかもわからない。老後の面倒を看てもらうどころか、将来、金属バットで殴り殺されるかもしれない。

 

 昔から、ちょっと気まずいことが起こると逃げてしまう。こんな自分が子供を持てるはずがない。植物さえ育てられないのに。

 

 と言っていたのですが、正直、そうだよね、とわたしも頷いてしまいました。

 いまのわたしの収入では、よっぽど手取りがあって協力的な人でないと子育ては難しいし、産む側の立場としてリスクが多いし、と考えてしまうことがあります。

 それにわたしも安生と同じで植物を育てていますが、水やりすら忘れてしまった日があるので、人を育てるなんてとても……と思ったこともありました。

 

 そして、さらに安生は、子どもを育てることに対して「費用対効果を考えないと」と言います。

 たくさんお金をかけて一生懸命育てても、いい子に育たなかったら……ということでしょうか。

 

 そんな安生の考えを一蹴したのが、琴子でした。

 

「費用対効果。そんなこと言ってたら、絶対、子供なんて作れない。子供なんて、結婚なんて、理不尽なことばかりだもの。じゃあ、今のあなたの生き方なんて、理不尽なことばかりだもの。じゃあ、今のあなたの生き方なんて、どこに費用対効果があるの? 旅して、バイトして死んでいくだけなのに、何を偉そうに。旅行していったい何になるの?」

 

 さらに琴子は続けます。

 

「費用対効果? ははは。そんなに費用対効果が大切なら、もう、いっそここで死になさい。それが一番、効果あるわよ。ご飯も食べなくてすむし、家も傷まない、服も必要ない、お金もかからない。あくせく働く必要もないわよ」

 

 これらの言葉は、立派に子どもを育て上げた琴子さんだからこそのものです。

 

「人生は理不尽なもの。でも、理不尽なことがなかったら、なんのための節約なの? 経済なの? 節約って、生きてることを受け入れた上ですることよ。費用対効果なんてない、ってことを受け入れてからの節約なのよ。じゃなかったら、私みたいな年寄りはもう死んだ方がいいってことよね」

 

 考えてみれば、安生にとって琴子さんは、ただのお友達であって母親でもなんでもない。

 それなのにここまで熱心に叱ってもらえるのは、とてもしあわせなことです。

 そんなひとがいて良かったね、安生。

 

 安生は琴子さんの力強い言葉に背中を押され、動き出します。

 安生と同じように、将来結婚して子どもを育てるかもしれないわたしにとっては、一番刺さったシーンでした。

 

 もちろん、読む人によって、グッとくるシーンも、共感する人物も変わると思います。

 けれど、大人なら多くのひとがお話のなかの誰かに共感できる。

 それがこの本の魅力です。

 

3 老後に子育てに結婚!未来を握るのは御厨家の女性たち

 

 つい、安生の話をしてしまいましたが、このお話の結末は御厨家の女性たちにかかっています。

 

 生きていると死ぬまでお金がかかるのはもちろん、その道中では節目節目に大きなお金が必要になることもあります。

 けれど、時に予測不能などうしようもないことも起こるものです。

 先ほどの琴子さんの言葉を借りるなら、「理不尽なこと」が。

 

 琴子は老後の心配をしていて、智子は医療費を、真帆は子育てのことを、美帆は結婚について真剣に悩み、向き合います。

 それはこの本だけの話だけでなく、読者であるわたしたちにも必ず同じ「理不尽なこと」が降りかかります。

 生きていれば必ず老いるし、老いれば誰かに助けてもらわなければなりません。

 逆に、子どもを授かれば、大人になるまで責任をもって育てなければなりません。

 その間にいつ病気をして、入院するともわかりません。

 そもそも、他の家のパートナーと結ばれるとき、すんなりいくとは限りません。

 この本で書かれていること以外にも、世の中には、たくさんたくさん理不尽なことがあります。

 

 それらをどうやって乗り越えていくかというと、美帆も、真帆も、智子も、琴子も、必ず誰かに相談していました。

 その相手は家族だけではなく、友人や専門家、美帆はブログで心境を文章にして伝えていました。

 ひとりで考え込んでも、答えは出ないのかもしれません。

 家族がだめなら友人に、友人もだめなら、とにかく誰かに、自分の思いを「伝える」ということが、実は一番大事なのだと学びました。

 

 もちろん、自分でお金を増やす方法を調べることも大切です。

 けれど、自分が動かなければ何も変わりません。

 

 「誰かに相談する」というのも、動くことのひとつです。

 御厨家の女性たちは、それぞれの理不尽や不安、そして自分自身と向き合い、悩み、そして解決に向けて動きます。

 その結末がどうなるか……は、みなさんの目でぜひ確かめてください。

 

原田ひ香さんの他の本は?次に読みたいタイトルをまとめてみました!

 

 今回、はじめて原田 ひ香さんの本を読んだのですが、引き込まれるリアルなお話で、ためになるし他の本も読んでみたいと思いました。

 次はどんな本を読もうかな、とタイトルやあらすじを眺めていて、読みたい本がいくつも見つかったので、ここにまとめておきます。

 

 

 

 書店を辞めようとしていた樋口 乙葉は、東京の郊外にある「夜の図書館」で働くこととなる。

 開館時間は夜7時から12時、亡くなった作家の蔵書のみがある。

 乙葉は本好きの同僚に囲まれながら、「働くこと」について考えていく。

 

 この「夜の図書館」という舞台と設定が面白くて、なおかつ、まかないは「実在の本に出てくる料理」という、食べ物要素も加わるという、わたしの好みにぴったりの一冊です。

 本とご飯とお仕事のお話は最強の組み合わせすぎて、とても気になる一冊です。

 

  • 『ここだけのお金の使いかた』(中公文庫)

 

 

 こちらはお金にまつわる短編小説アンソロジーで、原田 ひ香先生の他に、新津 きよみ先生、大崎 梢先生、永嶋 恵美先生、福田 和代先生、図子 慧先生、松村 比呂美先生のお話があります。

 原田 ひ香先生の書かれた短編小説のタイトルは「一生遊んで暮らせる方法」。

 そんなのあるの? と思いつつもつい惹かれてしまいます。

 

 

 

 夫と離婚した内田りさ子は、家をなくし都内の事故物件を一か月ごとに転々とするという、一風変わった仕事をはじめる。

 東京の賃貸物件をロンダリング浄化するりさ子の、人生を再生する物語。

 

 実際に住むのは怖いですが、事故物件に住む仕事って気になりますよね……!

 離婚というつらい経験をしたりさ子が、このお仕事を通してどうやって人生を再生するのか? お仕事に対する興味も強いですが、りさ子のことを最後まで見守りたくなるお話です。

 

  • 『人生オークション』(講談社文庫)

 

 

 やらかしりり子叔母さんと、就活に失敗してアルバイトをしている私。

 ふたりがオークションで売るのは、「人生のお荷物」。

 

 まさにいまわたしは部屋の不要物を減らして行っているところなので、とても刺さるあらすじだなと思いました。

 人生の一部になってくれたモノたちが売れれば、お金になるし場所が空くしいいことづくめだとは思うのですが、そうすることによって、このふたりはどう変わるのでしょうか。

 いまだからこそ読みたい一冊です。

 

  • 『口福のレシピ』(小学館  

 

 

 料理は、作られなくなったら死んでしまう。

 

 あらすじのこの強烈なひと言に惹きつけられました。

 SE兼料理研究家として働く留希子の実家は老舗料理学校を経営していて、江戸時代から続いており、いまの留希子につながっている。

 料理を題材にした本はたくさんあるけれど、料理研究家や料理学校が出てくるお話はなかなかないと思ったので、読んでみたいと思いました。

 

 今回はこの5冊に厳選しました。

 原田 ひ香さんは今作のようにお金にまつわる本のほか、料理を題材にしたり、本が出てきたり、ちょっとダークな本もあったりして、どれも読みたいと思いました。

 わたしも少しずつ読もうかなと思っているので、気になる方はぜひ読んでみてください。

 

『三千円の使いかた』のまとめ

 

 話の最後に、美帆はブログにこの一文を書きます。

 

 お金や節約は、人が幸せになるためのもの。それが目的になったらいけない。

 これはお祖母ちゃんの言葉ですが、私も今、そう思うのです。

 

 節約は我慢というイメージがありますが、節約することが目的ではなくて、節約したお金で何をするか、が大切で、それによってもっと幸せになれるし、そのために頑張れるのだと思います。

 御厨家のみんなが幸せでありますように!

 

 『三千円の使いかた』、気になる方はぜひ読んでみてください。

 

 

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