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【感想】『美少年探偵団 きみだけに光かがやく暗黒星』西尾維新(講談社タイガ)――❝「夢を見つけるのは、星を見つけるよりは、きっとたやすい」❞

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 ――『少年』。それは実に魅惑的な響きである。

 まだ大人でなく成長段階であり、声変わりは完全に終わっておらず、その体の線の細さはこの時期だけのものである。

 『少年』は永遠ではない。いつか『青年』になる存在である。

 そして見目麗しい『少年』を、人は『美少年』と呼ぶ。

 

 こんにちは。

 「夢と読書 一期一会BOOKS」の萌菜花です。

 

 ついに意を決して、西尾維新先生の本をご紹介しようと思います。

 わたしは中学生の頃、先生のデビュー作である『クビキリサイクル 青色サヴァン戯言遣い』(講談社ノベルズ/講談社文庫)を読んでハマり、独特すぎるキャラクターと中二病心をくすぐる世界観、そして登場人物の一人である、匂宮 出夢(におうのみや いずむ)くんが大好きになり、図書室でたくさん読んだ覚えがあります。

 この「戯言シリーズ」の文庫版、もう一人の主人公とも言えなくはない、零崎人識とその家族を主役にした「人間シリーズ」らへんを読んでから今まで、西尾維新先生からは離れていました。

 

 そんななか、久しぶりに読んだのがこの『美少年探偵団』。

 文庫だし文字量が少ないので、これからはじめて西尾維新先生の本を読むよ! という方におすすめのシリーズです。

 今まで2段構成の本を読んでいたので、この『美少年探偵団』の読みやすさにはびっくりしました。あっさり、さくっと読み終わることができます。

 

 全然美少年に触れてませんが、このお話は、5人の美少年とひとりの女の子が、「星」を探すお話です。

 

 

 

 

『美少年探偵団 きみだけに光かがやく暗黒星』のあらすじ

 

 私立指輪学園中等部。そこには、美少年だけで構成され、秘密裏に活動する「美少年探偵団」なるものが存在していた。

 2年生の瞳島 眉美(どうじま まゆみ)の探し物は、10年もの間見つかっていない「星」。

 それは両親との約束であり、ただ夢を追いかけてきただけだった。

 しかし、ある夜のこと、「美少年探偵団」と出会ったことで、彼女はとてつもなく大きな事件に巻き込まれてしまう――。

 4人の長と、もうひとり。美しすぎる5人の少年とマユミの、ただ一つの星を探す物語。

 

『美少年探偵団 きみだけに光かがやく暗黒星』と西尾維新先生について

 

 

 『美少年探偵団 きみだけに光かがやく暗黒星』

 

 定価:660円+税

 2015年10月20日 第1刷発行

 (株式会社 講談社講談社タイガ

 

 西尾維新

 

 1981年生まれ。

 2002年に『クビキリサイクル』で第23回メフィスト賞を受賞しデビュー。

 同作から始まる「戯言シリーズ」、「物語シリーズ」、「忘却探偵シリーズ」など多くの人気シリーズを手掛け、漫画化・アニメ化・舞台化・ドラマ化などのメディアミックスを展開している。

 さらに漫画の原作やノベライズ、短編など著書多数。

 

『美少年探偵団 きみだけに光かがやく暗黒星』の感想

1 5人の「美」少年とマユミの設定が面白い!魅力的なキャラデザイン

 

 美少年。その名もずばり「美しい少年」のことですが、彼ら「美少年探偵団」の団則は、

 

  1. 美しくあること
  2. 少年であること
  3. 探偵であること

 

 があります。どれもそのままじゃん……と思ってしまいますが、同じ美少年でも一人ひとりの美しさが違います。

 

 たとえば、1年A組の足利 飆太(あしかが ひょうた)くん。名前の通り足が速く、生足が綺麗すぎて女子たちが全員スカートを長くして黒のストッキングを穿くようになったという、伝説の持ち主。

 それから生徒会長の咲口 長広(さきぐち ながひろ)くん。まるで声優のような麗しい声で聴衆のこころを掴み、1年生から3年連続で生徒会長を務めています。

 つまり、「美脚」の持ち主と、「美声」の持ち主であるということ。

 ということは、あと3人もそれはそれは美しい特徴を持っています。

 

 対してマユミちゃんはといえば、

 

「よく見なよ、墨汁どころか、さながら菱川師宣じゃん」

 

 と年下の飆太くんに火の玉ストレートな表現をされてしまい、自身も反論しないほど自他共に認める暗い女子生徒です。コミュニケーション能力が低くて、髪が長くて、目にコンプレックスがあります。そのため、普段は眼鏡をかけていて、ただ星を見るのが好きな女の子です。

 

 「美少年」と形容されると、その見た目が気になるところですが、この5人は表紙にいるので、なるほどー、個性的だなーときっと思うことでしょう。キャラクター紹介のページもありますので、誰がどの名前かも知ることができます。

 では、マユミちゃんは? 語り部なのに見た目がわからないの? そう思われた方は、ぜひ❝最後まで❞読んでみてくださいね。

 

 もうこの独特の名前と個性的すぎるキャラクターたちだけで、あーー西尾維新先生の小説だーー今わたしは西尾維新先生の小説を読んでるぅぅううと実感しました。名前が読みにくいのになぜか覚えてしまうのは、それだけキャラクターに合った(合わせた?)実は覚えやすい名前だからだと思います。

 こういった言葉遊びが随所にちりばめられているのが、西尾維新先生の書く小説の特徴のひとつであるといえます。

 

2 読めば江戸川乱歩が読みたくなる!タイトルや設定に注目!

 

 「少年探偵団」といえば、『名探偵コナン』や『CLAMP学園探偵団』をなんとなく想像しますが、大元は江戸川 乱歩の「明智小五郎シリーズ」に出てくる子どものみで構成された探偵団です。

 恥ずかしながら、それをわたしは今まで存じておらず、だからコナンに出てくるのか……! とものすごく感動を覚えました。蘭姉ちゃんのお父さんは「小五郎」だし、コナン達1年B組の先生の名前は「小林」先生だし、すごい長年の疑問が解消された瞬間でした。

 

 話が逸れてしまいましたが、『美少年探偵団』では、この「明智小五郎シリーズ」に関する名前や話が出てきます。

 たとえば、

 

 やっぱり、美少年探偵団というのは、江戸川乱歩の少年探偵団から由来しているようだった――でも、だとしたらリーダーは、明智小五郎ではなく、小林少年のはずだけれど。
 まあ、真打ちは最後に登場するという意味での、明智小五郎なのかもしれない。明智小五郎に限らず、探偵役というのは、存外、能力が高ければ高いほど、必然的な出番が減っていったりするものである。

 

 とか。いやーマユミちゃん博識だなー。読書も嗜んでるんだろうなー。

 

 元の「少年探偵団」をご存じの方は、こんなマユミちゃんの説明がなくとも気付くのかもしれません。「マユミ」という名前にも、きっと引っかかりましたよね?

 が、しかし、わたしのように無知蒙昧な読者もきっと一人や二人はいるでしょうから、西尾先生はとっても親切です。ありがたや。

 

 ちなみに、この『美少年探偵団』はシリーズ化しており、この巻のサブタイトル、そして続巻のタイトルには江戸川乱歩の作品名が入っています。

 江戸川乱歩の「少年探偵団シリーズ」はポプラ文庫や青い鳥文庫などから発行されているので、これから読もうかなと思った方におすすめです。ただし、ポプラ文庫は全26巻あるので、「美少年シリーズ」に使われたタイトルをとりあえず読んでみる、というのでもよさそうです。

 

 「文学」、と呼ばれる、現代の言葉遣いでない名作たちは、名前は知っていてもちょっととっつきにくい、と考える人も少なくないと思います。かくいうわたしもそうですし。

 ですが、こうやってオマージュされると元の作品も気になってくるので、読みたい本を増やす良いきっかけになると思います。

 

 足利 飆太、咲口 長広、袋井 満(ふくろい みちる)、指輪 創作(ゆびわ そうさく)、双頭院 学(そうとういん まなぶ)の5人からなる「美少年探偵団」は、瞳島 眉美の依頼を受け、マユミが10年前に見たという「星」を探します。

 シリーズの最初から人とか犬とかでなく、「星」を探すという、一風変わったロマンチックな依頼を、「美しい!」と褒め称えて受けてしまうのだから、やはり『少年であること』を忘れていない少年たちであるといえます。

 

 うん、そうそう、これは「星」を探す物語。

 

 

3 マユミが探している「星」は見つかるのか⁉予想外の展開にびっくり……!

 

 マユミちゃんが10年も探しているのに、見つからない「星」。

 10年もあれば科学の進歩は進み、新しい星が発見されていてもおかしくないはず。ともすれば、逆にその星は消滅してしまったのか? と、読みながらいろいろ「星」の正体について考えていたのですが……わたしの推理は50点くらいのお粗末なものでした。

 いや、それは思いつかんよ……!

 

 初めてその本を読むときの醍醐味として、わたしは「本に素直に騙される」ようにしているのですが、そんな壮大な話になるとは思いもしませんでした。

 

 というか、よく中学生がそんなことできたな! ということがいっぱい出てくるのですが、むしろそこに「西尾維新」を感じてひとりでこれこれぇ! とテンションが上がっていました。きっとわかる人にはわかってもらえるでしょう。

 

 ここでちょっと、ほんのちょっとだけネタバレ? というかヒントをいうと、タイトルにある「暗黒星」は江戸川乱歩の小説「暗黒星」が使われているみたいなので、調べても江戸川乱歩のことばかりが出てきます。

 そこで、「黒星」と調べてみると、いくつかの意味が出てきます。

 

  1. 黒くて丸いしるし。
  2. 的の真ん中にある黒点
  3. ねらった所。急所。図星。また、的中すること。
  4. 目の中のひとみ。
  5. 相撲の負けのしるし。負けること。重大な誤りを犯すこと、失敗すること。 

 

 などです。

 これらの意味、読んだ後に改めて見てみると、なーるほどなぁーーと納得することができます。色々かかってる。すごい。もう一回読み返したい!

 

 冒頭で、マユミちゃんは自ら、

 

 だからこれは、わたし、瞳島眉美が夢を諦めるまでの物語だ。

 

 ときっぱりと言い切っているのですが、しかしながらこの物語は、

 

(始)

 

 という言葉で終わります。

 それらに「星」否、「暗黒星」がめちゃめちゃ関わっているわけです。

 

 マユミちゃんはどうして夢を諦めたのか? 「星」は見つかったのか? ほかの団員はどんな美少年なのか? ……

 気になった方はぜひ、『美少年探偵団 きみだけに光かがやく暗黒星』を読んでみてください。

 

『美少年探偵団』はシリーズ?シリーズ展開やメディアミックスを紹介!

 

 途中でちらっといいましたが、この『美少年探偵団』はシリーズ化されており、漫画化、アニメ化、舞台化もされています。

 

 原作の「美少年シリーズ」は2015年10月から2021年5月までの間に全12巻がでており、漫画は全5巻、アニメは2021年に全12話が放送されました。

 舞台はその後2021年12月から2022年1月にかけて上映されています。

 一冊目は2015年と少し古いですが、近年まで続いていた人気のシリーズであったことがわかりますね。

 

 試しに、YouTubeにあるアニプレックスチャンネルのアニメ1~3話(が今作分に当たる)のダイジェストを見たのですが、制作が「物語シリーズ」でおなじみのシャフトさんだけあって、めちゃくちゃきれいで声も想像通りでとても良かったです……!

 

 続巻はこれから読むのでアニメを見るのは原作6巻の『D坂の美少年』を読んだ後になりますが、めちゃめちゃクオリティ高いし絶対面白いと思います。

 

 今作を読んで1~3話のダイジェストを見ると、団長の声が村瀬 歩さんなのが大正解すぎてね……‼ 早く全巻読んでアニメも見たいと思います!

 

 気になる方は漫画やアニメもぜひチェックしてみてください。

 ただし、先に原作を読んでおくことを推奨します。

 

 

『美少年探偵団 きみだけに光かがやく暗黒星』のまとめ

 

 「戯言シリーズ」「物語シリーズ」「忘却探偵シリーズ」『めだかボックス』など、たくさんの名作を生んでいる西尾維新先生の人気シリーズのひとつ「美少年シリーズ」の第一巻。

 墨汁のように、いやもはや菱川師宣のように暗い少女・瞳島 眉美が、5人の美少年からなる「美少年探偵団」に出会い、星を探すお話です。

 

 マユミちゃんが夢を諦める物語を、ぜひその目でご覧ください。

 

 

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