夢と読書 一期一会BOOKS

日々読んだ本をご紹介。「夢と読書(ラクマで古本屋モドキ)」にて販売中です。

私は、夫を他人として意識する瞬間が好きだ。――いくつもの週末(江國香織)

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 こんにちは、「夢と読書 一期一会BOOKS」の萌菜花です。

 今回ご紹介する本は『いくつもの週末』です。

 いつも透明感のある文体を書く江國香織さんの内面が知りたい! と思い、この本を選びました。

 わたしのような人の他にも、 

「夫婦」や「恋人」の出てくる話が読みたい
都会の生活を知りたい
江國香織さんのお話が読みたい

 そんな方におすすめの一冊です。

 本の情報本の内容感想を本の中の言葉を引用しながら書きたいと思います。
 気になる方はぜひ、最後まで読んでください。

 なお、こちらは「夢と読書(ラクマで古本屋モドキ)」にて、実際に販売中の商品になります。▶▶▶ 売り切れました。

 

 

 

 

 

この本について

 

 

 

いくつもの週末
 
 著者:江國 香織
 定価:420円+税
 2001年5月25日 第1刷
 (集英社文庫

 江國 香織(えくに かおり)

 1964年東京都生まれ。
 1992年『こうばしい日々』で第7回坪田譲治文学賞、同年『きらきらひかる』で第2回紫式部文学賞、2002年『泳ぐのに、安全でも適切でもありません』で第15回山本周五郎賞、2004年『号泣する準備はできていた』で第130回直木賞、07年『がらくた』で第14回島清恋愛文学賞、2010年『真昼なのに昏い部屋』で第5回中央公論文芸賞、2012年「犬とハモニカ」で第38回川端康成文学賞を受賞。

 

どんな本?

 

 好きな音楽も好きな食べ物も、好きな映画も好きな本も好きな遊び方も全部違う、しょっちゅう喧嘩をするふたり。平日は早く週末にならないかなと思うのに、月曜日には疲れる。新年は別々に過ごすし、おなじ部屋にいてもべつべつのことをしている。けれど、けんかをして出て行こうとすれば夫は玄関に立ちふさがるし、江國さんは夫のために焼き魚の骨を全部とるし、たとえくだけていても、夫が持って帰ってきたたいていの会社のおみやげは食べる。

 ――そんな、江國香織さんと、夫の、どこか矛盾した関係を綴った甘やかでどこか不穏なエッセイ。

 

どこが良かった?

 

Vlogのように美しい江國香織さんの世界観が楽しめる

 

 「エッセイ」とは、フランス語に由来しており、「毎日感じていること・体験したことを自由な形式で書いた文章」のことを言います。日本語だと「随筆」ですね。ですので、筆者の日常が垣間見えるのがこのエッセイなんですが……この『いくつもの週末』は、江國香織さんの日常が描かれているはずなのに綺麗すぎてまるでVlogを読んでいるようだな、と感じました。生活感がない、と言いますか。生活はしているのだろうけど、こう、雑なところがないというか、どうにもドラマティックに見えるというか。旦那さんのくだりは妙に生活感があるのに……。
 
 それはどうしてだろうな、と読みながら考えたのですが、それは江國香織さんの文章にあるのではないかと思いました。江國さんの文章はなめらかで、ひらがなを多く多用されています。それが彼女独特のどこかドラマティックな世界観を生み出していると思うのです。
 わたしは彼女のエッセイを読むのははじめてで、私生活などは全く知らないため、このエッセイがどこまで本当のことを書いてあるのかがわからず、なんだか現実味がない、と感じてしまったのでした。

 

②なんだか不穏? 「夫婦」や「結婚」について考えてしまった

 

 結婚生活が良いことだけではないのは結婚していないわたしでもなんとなく分かることですが、開設の井上荒野(あれの)さんもおっしゃっていた通り、読んでいると”次第に不安を覚えはじめる”のです。あ、あれ、大丈夫……? と。

 結婚すると相手の嫌な部分も見えてきます。
 旦那さんは「九月に旅行に行く」と江國さんに言われて、「じゃあ、ごはんは?」と言うし、引き出しをしめなかったり、返事をしなかったり、魚の骨をとらないと食べなかったりする。その描写を読みながら、わたしはえっ、と思う。……それは、ストレスなのでは……?
 でも、江國さんはそうではないのです。

 はじめは驚いたけれど、いまは全然かまわない。それで幸福ならとても簡単なことだもの。幸福にしたりされたりする方が、教育したりされたりするよりずっと素敵だ。  

 同棲したり結婚したり、お付き合いをしたりするとき、ルールを決めるのは良くない、とどこかで読んだことがあります。ルールにしてしまうと守らなければいけないし、できないということはルールに反したということになるから。たぶん「やってよ!」とお願いではなく譲歩でもなく強く言ってしまうことが「教育」という意味なのでしょう。わからせるのではなく、できないところを補い合うのがわたし個人の理想です。

 そんな、理想通りにはいかないから江國さんはしょっしゅう喧嘩をしたり、離婚した後のことを考えたりしてしまうのでしょうけど、つまるところそれも喧嘩ができる夫という存在がいるからで。旦那さんは江國さんに対して寛容で、だから別れていないのだといっていました。

 でも、面倒な旦那さんに対して文句を言いながらでも面倒を見てあげて、結局ひっついて眠るのだから、江國さんも旦那さんに対して寛容なのでは?
 あまり自覚がなさそうなのがかわいらしいと思ってしまいました。

 

③それでもドラマのような何気ないワンシーンにきゅんとした

 

 そう、このエッセイは「甘くビターなエッセイ」と紹介されているだけあり、不穏なビターさも孕みつつ、思わずきゅんとする場面もたくさんあります。

 中でも一番のお気に入りは、

 「これが一時の気の迷いなら、結婚は恒久的な気の迷いだわ」
  私が言うと、夫は少し黙って考えて、
 「そんなことない」
  とこたえる。でも、夫の目は、絶望的なかなしさで、そのとおりだと言っている。夫も知っているのだ、と思うと私はいっきに身体の力が抜けてしまう。
 「そんなことない」
  ともかく夫はそう言い張る。玄関に立ちふさがったまま。  

 というシーン。喧嘩をして、出て行こうとした江國さんを止めたところ。この辺りが江國さんのいう、旦那さんの「寛容」なところなのかなあと思います。普段はめちゃくちゃ面倒くさがりで、動かないのに。売り言葉に買い言葉で「ああ出て行け」と言い返すわけでもなく、自らが動いて立ちふさがる。きゅんとしませんか!?

 それから、野良猫に餌をあげたくて帰るなり江國さんにせがむところも。かっ、かわいいー! と悶絶しました。旦那さんだけでなくて江國さんにもきゅんきゅんしたところはたくさんあって、隅々まで語りたいのですが、それはもう、読んでくださいっ!

 

まとめ

 

 江國さん独特の甘くて苦い結婚生活を描いたエッセイ「いくつもの週末」。
 結婚していている人やそうでない人もお楽しみいただけます。ちょっと大人なお話ですが、かと言って中高生が読めないわけでもないので、気になった方はぜひ、読んでみてください。

 

 

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