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【感想】『ゴーストハント 1 旧校舎怪談』小野不由美(角川文庫)

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 こんにちは。

 「夢と読書 一期一会BOOKS」の萌菜花です。

 

 今回わたしが読んだ本はゴーストハント 1 旧校舎怪談』小野 不由美(角川文庫)です。

 

 この作品は30年以上愛されているロングセラー作品で、前身となる「悪霊」シリーズの文庫本が最初に出たのはなんと1989年。その後内容を大幅に改編したリライト新装版として「ゴーストハント」シリーズが2010年から単行本で刊行されました。

 もともと1996年にラジオドラマ化された時点で、「ゴーストハント」という名前は使われており、1998年には漫画化、2006年にアニメ化もされました。

 さらに、令和に入った 2020年にこのリライト版が角川文庫より刊行され、同じタイミングでオーディオブック化もされています。

 

 わたしが『ゴーストハント』を知ったのはおそらく2010年ごろ、当時なかよしで連載されていた漫画版を読んだ記憶があるのですが、その後は原作を読むことなく、いまに至ってしまっていました。非常にもったいない!

 

 なぜこんなに長きに渡って愛されているかというと、それは個性的なキャラクターの多さと、ただのホラー小説ではない面白さが詰まっているからではないでしょうか。

 

 まだちゃんと読んだことがないなぁという方、いまからでも遅くはありません。

 なぜならあなたには、「初見」という読書でいちばん楽しめる読書方法が残されているからです

 

 前置きが長くなってしまいましたが、今回は「8月らしい本を読もう!」企画第2弾として、ゴーストハント 1 旧校舎怪談』小野 不由美(角川文庫)をご紹介します。

 

 

 

 

ゴーストハント 1 旧校舎怪談』小野不由美(角川文庫)のあらすじ

 

 谷村 麻衣が通う高等部の旧校舎には、「建物を解体すると事故に遭ったり病気にかかったりする」といういわくがついていた。

 その旧校舎を今度こそ取り壊すため、校長は「渋谷サイキックリサーチ(SPR)」をはじめとした複数の除霊のスペシャリストに調査や除霊を依頼する。

 ある日、麻衣は調査に来ていたSPRの渋谷 一也(しぶや かずや)に出会い、調査に使っていた機材を壊してしまったことから、助手として調査に協力することとなる。

 「幽霊はいる」「幽霊はいない」と意見が分かれるなか、調査をしていたうちの一人が、二階の教室から転落する事故が起こってしまう。

 果たして麻衣たちは幽霊の正体をあばくことができるのか⁉

 ホラー&ミステリで描かれる、小野 不由美屈指の「ゴーストハント」シリーズ第1巻。

 

ゴーストハント 1 旧校舎怪談』と小野不由美先生について

 

 

 『ゴーストハント 1 旧校舎怪談』

 

 定価:720円+税

 令和2年6月25日 初版発行

 (株式会社KADOKAWA角川文庫

 

 ※旧題『悪霊がいっぱい⁉』小野不由美講談社講談社X文庫ティーンズハート

  1989年8月5日 第1刷発行

 ➡リライト新装版『ゴーストハント 1 旧校舎怪談』(メディアファクトリー/幽BOOKS)

  2010年11月19日 初版第1刷発行

 ➡角川文庫版『ゴーストハント 1 旧校舎怪談』(株式会社KADOKAWA/角川文庫)

  2020年6月25日 初版発行

 

 小野 不由美(おの ふゆみ)

 

 大分県中津市出身。12月24日生まれ。

 京都大学推理小説研究会に所属。

 1988年『バースデイ・イブは眠れない』で作家デビュー。

 1989年に「悪霊」シリーズ第1作『悪霊がいっぱい⁉』を発表。

 1992年よりシリーズものとして刊行された「十二国記」シリーズは、2020年に第5回吉川英治文庫賞を受賞した。

 また、2012年7月に刊行された『残穢』は、翌年の第26回山本周五郎賞を受賞している。

 その他『東京異聞』、『屍鬼』、『黒祠の島』などがあり、多数の作品がメディアミックス化されている。

 

ゴーストハント 1 旧校舎怪談』の感想

1 ゴースト(幽霊)をハント(狩る)する話……ではありません!

 

 ネタバレにして最大の魅力をお伝えします。

 これは異能バトル小説ではありません。

 

 わたしは、漫画を読んだことがあるくせに、ナル(渋谷 一也)のビジュアルの良さや各スペシャリストたちの個性的なキャラクターの記憶しかなく、どんな内容だったかはほぼほぼ覚えていませんでした。そのため、『ゴーストハント』というタイトルから、なんとなく「ゴースト(幽霊)をハント(狩る)」話、なのだと思っていました。

 わたしのように、タイトルしか知らない人は、霊感とか、霊力とか、なんかそういう異能を使って悪霊を退治する話なのかな? と想像している人もいるかもしれません。

 

 そう、違うのです。「ホラー&ミステリ」という言葉を思い出してください。

 この小説には、ホラーだけではなく、ミステリ要素が含まれているのです。

 

 「ナル」こと渋谷 一也が若干17歳にして所長を務める「渋谷サイキックリサーチ(SPR)」は、機材を使い、根拠に基づいてその場で起こった現象を解き明かしていきます。

 ゲームで例えると、「Phasmophobia」のような感じです。いえ、もっと現実的かもしれません。

 室温や音声、距離、過去にあった事件、地形、間取り、映像など、様々な視点から「幽霊」の正体を追求していくのが面白いんです。

 

 その過程は、霊感もない、たまたま巻き込まれた麻衣の視点で進んでいくことで、知識がない我々読者も、ハラハラドキドキ楽しむことができる仕様になっています。

 

2 巫女に坊主、エクソシスト霊媒師、個性が強すぎるスペシャリストたち

 

 主人公の麻衣が普通の女子高生なだけに、ナルをはじめとしたスペシャリストたちはめちゃめちゃ個性が際立っています。

 そんな彼らについて、解説の池澤 春奈さんは次のように語っています。

 

 普通は巻を追うごとに1人ずつ追加されそうなところを、惜しみなく1巻で全員投入する小野さん凄い。

 

 ――と。

 たしかに、こんなに個性つよつよなメンバーなら、1巻ずつこう、敵としてライバルとして出てくるのがセオリーなんですが、この小説ではまとめて一気に出てきます。それでいて誰も、主人公すら埋もれない

 それもこの本の魅力的なところの一つだと思います。

 

 「巫女」に「坊主」にってそれだけでキャラは十分たつのですが、ただのスペシャリストでないんですね。

 まず渋谷 一也。若干17歳にして「渋谷サイキックリサーチ(SPR)」の所長。わたしが10年以上経ったいまでもビジュアルを覚えていたほど記憶に残っている美形。であり、ナルシスト。そう、「通称:ナル」の「ナル」は「ナルシスト」のナル。超のつく自信家。

 普通なら、もうナルと麻衣だけでも十分お話は書けると思うんです。「できる専門家と無知な助手の主人公」みたいな感じで。

 ですが、まだまだスペシャリストたちが出てきます。

 まず、巫女。おしとやかで強い感じかと思いきや、ド派手な身なりで言うこと言っちゃう松崎 綾子(まつざき あやこ)。あ、煙草も吸います。

 次に坊主の滝川 法生(たきがわ ほうしょう)。名前はそれっぽいけど破戒僧。茶髪・長髪。すでに高野山を下山しています。

 唯一のオアシス、エクソシストジョン・ブラウン。金髪に青い瞳。でもヘンテコな関西弁をしゃべります。童顔だけど19歳。

 最後に口寄せの上手い有名霊媒師、原 真砂子(はら まさこ)。切り揃えられた黒い髪に白っぽい着物、紅い唇。その姿はまさに日本人形。

 小野先生、本当にいっぺんに出しすぎではありませんか……?

 

 逆にいうとキャラのコントラストが強すぎて、読んでる途中で起こりがちな「このキャラって誰だったっけ?」現象が起こりません。

 あの現象が起きないのは、麻衣の絶妙な距離の詰め方あってのものだとわたしは思っていて、渋谷 一也のことを「ナル」と愛称で呼ぶし、一見とっつきにくい日本人形みたいな見た目の原 真砂子のことも、後に「真砂子」と呼びます。

 歳が近いというのもあるけれど、嫌ならみんな「嫌」と言える人達ですので、それを受け入れているということは、麻衣自身の人柄だと思うのですね。

 言えばみんな別の業者のはずなのに、いつの間にか協力して調査にあたっている。

 そしていつの間にか一緒に行動している。

 そんな隠れた魅力を持っている、普通の主人公視点だからこそ、読者は置き去りにならなくて、むしろ自分を投影しながら楽しく読むことができます。

 

 まだ手元に次巻がないのですが……早く全巻読みたくてたまらないです。

 みんなの今後の関係性とか、新たな事件とか、麻衣と一緒に読者のわたしたちも「経験」したいなと思います。

 

3 「幽霊」の正体は? 無事に旧校舎は解体できるのか? それは読んでのお楽しみ!

 

 ここで「幽霊」の正体を書くわけにはいかないんですが、この小説では「まずそれらの現象が幽霊の仕業であるのか」を調べていきます。

 ゴーストハンター(心霊現象調査の専門家)、巫女、坊主、エクソシスト霊媒師がそろうなかで、まず最初に調べるのが、「そもそも幽霊の仕業であるか否か」なんです。

 当たり前かもしれないけれど、これだけのメンツがそろっていて、タイトルが『ゴーストハント』なんだから、そら幽霊が出てくるんだろ! と決めてかかっていた読者は、この時点であれ? と違和感を覚えるはずです。

 「幽霊以外の原因である可能性があるの?」――と。

 彼らが仮説として出したのは以下の通りで、

  • 地霊
  • 地縛霊
  • スピリット(精霊)
  • ゴースト(幽霊)
  • 霊はいない

 と、こんな感じ。

 わからないなかで知識のない麻衣が不可解な現象に遭うことで、我々読者も怖い思いをし、しかしナルによって論破されることで安堵し、それでも説明のつかない現象が再び起こることでまたヒヤッとし……、を繰り返すことで、やがて真実にたどり着きます。

 その「真実」とは、ぜひ読んで確かめてください。

 

 そういえばこの本のなかで回収されてない伏線もあるので、それらは次巻以降で明かされるということでしょうか。もう、いっぺんに読みたくなります。

 そんな人のために、角川文庫版1~7巻セットもありますので、この機会に一気読みするのも面白そうです。

 

 

ゴーストハント』以外にメディアミックス化された小野不由美先生の小説は?

 

 『ゴーストハント』は小野 不由美先生の「代表作の一つ」と言えますが、他にも有名な作品がいくつかあります。

 そのなかでも、メディアミックス化された作品をご紹介します。

 

 まずは十二国記」シリーズ

 このシリーズは累計1,280万部を超え、2002年にアニメ化、2019年に18年ぶりの新刊が出たことで話題となり、「ゴーストハント」シリーズ同様30年以上愛されています。ゲームにもなっています。

 あらすじは、女子高生の中嶋 陽子が突如異世界に連れ去られたことからはじまり、過酷な運命に抗いながらも故国へ還るために生きる、というお話です。

 登場人物が描かれた、非常に綺麗な表紙が印象的で、内容は知らなくても一度は名前を聞いたことがあるという方も多いと思います。

 中国風の世界観で、ファンタジーだけどこれでもかと主人公を苦しめる展開のようなので、ざっとあらすじを読んだだけで本編が読みたくなりました。

 

 

 現在15巻まで出ていますが、完結はしていないようです。

 15巻セットはこちらです⇩

 

 

 次に屍鬼

 こちらは漫画化され、のちにアニメ化もされました。

 小さな村が舞台のホラーで、土葬の習慣が残っており、ゾンビのような吸血鬼のような存在が出てきます。「村」「土葬」「感染」「洋館」「連続死」みたいな、和ホラー好きにはたまらないワードがわんさか出てきます。

 実は、原作と漫画では展開が違うようなので、できれば読み比べたいですね。

 わたしは当時ジャンプスクエアで途中まで読んでいたのですが、展開が違うというのは知らなかったので……これはどちらを先に読むか迷いますね。

 

 

 

 他にも第26回山本周五郎賞を受賞し、2016年に映画化された残穢、漫画化された『東京異聞』黒祠の島などもあります。

 気になった方はぜひ読んでみてください。

 

ゴーストハント 1 旧校舎怪談』のまとめ

 

 長年愛されている「ゴーストハント」シリーズ第1作「旧校舎怪談」は、いわくつきの木造校舎を舞台にしたお話です。

 個性豊かな登場人物と、怖いけどナルが論破してくれる安心感、気になる「幽霊」の正体に麻衣と一緒にドキドキしながら楽しめます。

 今からでも遅くはないので、気になった方はぜひ読んでみてください。

 

 

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