本ページはプロモーションが含まれています
こんにちは。
「夢と読書 一期一会BOOKS」の萌菜花です。
今回わたしが読んだ本は『空き店舗(幽霊つき)あります』(幻冬舎文庫)です。
この本は幽霊の出るビルを舞台にしたお話です。
武蔵小金井にある古くて小さなビルの中は、一階が古本屋さん、二階がパンケーキカフェ、三階が美容室、四階が法律事務所という魅力的なラインナップ。しかも駅から徒歩3分。築50年近くの古いビルとはいえ、リフォーム済で月6万。何故なら今は半額キャンペーン中だから。
新しくお店を開きたい店主さんには夢のような条件の物件ですが、ただし、「幽霊つき」の物件です。出ます。出るんです、女の子の幽霊が。
え? 幽霊が怖い? いやいや、大丈夫ですよ、その幽霊の女の子が視えるのは、店主さんだけですから。
8月といえば怖い話! ということで、今回は幽霊の女の子と4人の店主さんたちが交流する、優しくて悲しくて切ないお話を紹介します。
- 『空き店舗(幽霊つき)あります』のあらすじ
- 『空き店舗(幽霊つき)あります』とその著者について
- 『空き店舗(幽霊つき)あります』の感想
- ささき かつお先生の他の著書を紹介
- 『空き店舗(幽霊つき)あります』のまとめ
『空き店舗(幽霊つき)あります』のあらすじ
武蔵小金井駅から徒歩3分、築50年近くの小さなビル「スカイカーサ武蔵小金井」は、家賃半額キャンペーンの甲斐あって、1~4階まで新たなお店が入ることに。
1階は古本屋さん、2階はパンケーキカフェ、3階は美容室、4階は法律事務所。
古い建物はリフォームされていて、それでいてこの破格の家賃。
それもそのはず、このビルには、女の子の幽霊がいた――。
それぞれに悲しい事情を抱えた4人の店主と幽霊の女の子。
店主が一人きりのときにしか現れないその女の子は、店主と交流を図りながら、いくつもの奇跡を起こす。
そして、女の子の正体とは――。
ほっこりするけど悲しく切ない、”ほろりと泣けるミステリ”。
『空き店舗(幽霊つき)あります』とその著者について
空き店舗(幽霊つき)あります
定価:580円+税
平成29年5月10日 初版発行
ささき かつお
1967年東京都生まれ。早稲田大学卒業。
出版社を経て書評家、ライターとして活躍する。
2015年に『モツ焼きウォーズ~立花屋の逆襲~』が第5回ポプラズッコケ文学賞大賞を受賞し作家デビュー。ノベルズ・エクスプレスより同タイトルが刊行されている。
その他に『Q部あるいはCUBEの始動』、『心がフワッと軽くなる!2分間ストーリー』(どちらもPHP研究所)などがある。
『空き店舗(幽霊つき)あります』の感想
1 悲しい事情を抱えた4人の店主たち
1階の「一ノ瀬古書店」、2階の「カフェ明日香」、3階の「ヘアサロンYUJI」、4階の「四谷法律事務所」の店主たちは、それぞれが大切な人と死別しています。
たとえば「一ノ瀬古書店」の若き店主・一ノ瀬 達也くん。彼は古書店を営んでいた祖父の遺言をきっかけに、古本屋さんを開店することになりました。
同じように、他の階の店主さんたちには、お店を開くまでに大切な人との悲しいエピソードがあり、後悔を抱えたまま、失った人を想いながらお店に立っています。
場所を借りる契約の時点でそれぞれに「幽霊つき」であることが説明されていただけあって、どの店さんも怖がらずに幽霊の女の子――「アリサ」と交流をはじめます。
そのアリサちゃんが、一ノ瀬くんと亡き祖父とをつなげてくれる存在になるのです。
アリサちゃんは普通の女の子の幽霊で、いつも黒猫の幽霊と一緒に現れます。
4人はすぐにアリサちゃんの存在を受け入れるようになります。
2 触れられるし話もできるしパンケーキも食べられるタイプの幽霊「アリサ」
幽霊の女の子・アリサちゃんは、店主さんがお店でひとりの時だけに現れます。
幽霊らしく瞬間移動や消えたり現れたりもしますが、普通に少女漫画雑誌を立ち読みするし、パンケーキを作るのを手伝ったあと食べるし、店主さんがアリサちゃんに触ることもできます。でも幽霊です。……ということは、亡くなっています。
服は毎回変わるけど、髪型はカットしても次の日にはいつものツインテールに戻っていたり……だけど、とても良い子です。
そもそもアリサちゃんは、店主さんとは話すことができて、店主さんの大事な人とをつなぐ存在でもあります。
その店主さんたちとのやりとりがとってもほっこりするのです。
ある日、いつものように一ノ瀬くんとアリサちゃんが話をしていて、一ノ瀬くんに彼女がいないと知ったアリサちゃんは、
「アリサが彼女になってあげてもいいよ。お兄さんカッコいいから」
と言いました。ちょっとおませな幽霊さんです。
ぜーんぜん怖くない無邪気で年相応ですが、そんなアリサちゃんには生前の記憶がありません。それでいて「このビルから出られない」と言い、いわゆる地縛霊であることがわかります。
――なぜ、アリサちゃんはこのビルに囚われてしまっているのでしょうか。
3 築50年近いビル「スカイカーサ武蔵小金井」と「アリサ」との関係は?
このビルとアリサちゃんとの関係は、巻末で明らかになります。
どうして何年もその姿でビルの中をさまよっていたのか、はもちろんここでは書けないのでぜひ読んでほしいのですが、彼女にもまた、悲しい過去があります。
ものすごーく個人的なことを言うと、この終わり方には納得できていないのですが、読書をしているとそういう本に出合うこともあります。
そういうときは、自分の思い描く結末を一回考えてみることにしています。
あのときにあの人物が違う行動をとったら、とか。最後の結末がこうだったら、とか。一旦自分で考えてみて、でも、どうしてそうしなかったのかを考えてみます。
個人的にハッピーエンドが好きなのですが、きっと、彼らにとってのハッピーエンドはこうだったのだろうな、と思うことにしました。
わたしは本の結末のさらにあとのことを妄想するのも好きなので、その後それぞれのお店が繁盛しているといいなぁ、とか、自分がそのお店の常連になったらとかを考えてみたり、バイトでどれかのお店で働けないかなぁと想像したり……「その後」を考えるのも面白いのでおすすめです。
この結末をどう思うかはあなた次第なので、ぜひ読んでみてください。
ささき かつお先生の他の著書を紹介
この本は切ない中にもほっこりする本だったので、そういう系統を書いていらしているのかなと他に書かれている本を調べてみると、ジャンルが違って面白そうだったので紹介します。
デビューのきっかけがポプラ社のズッコケ文学大賞だったこともあり、児童文学が多いようです。
まずデビュー作である『モツ焼きウォーズ~立花屋の逆襲~』(ノベルズ・エクスプレス)。もうタイトルからして内容が気になりますよね。
こちらはその名の通り、立ち退きを迫られたモツ焼き屋「立花屋」を守るために戦う人々のお話です。めちゃめちゃ面白そう。
次に『Q部シリーズ』(PHP研究所)2冊。
『Q部あるいはCUBEの展開』と『Q部あるいはCUBEの始動』。
ミステリー研究部改め「Q部」の部員たちが学園の謎を解いていくお話です。
イラストもめちゃくちゃ可愛くて、読みやすそうです。
あともう一冊気になっているのが、『心がフワッと軽くなる! 2分間ストーリー』(PHP研究所)。
ささき かつお先生はミステリを書いていらっしゃるイメージなのですが、この本は毛色が違うので選んでみました。
その名の通り2分間くらいでさらっと読める優しいお話が詰まっている本なので、朝・晩の気分転換に良いかもしれませんね。
気になった方はぜひチェックしてみてください。
『空き店舗(幽霊つき)あります』のまとめ
『空き店舗(幽霊つき)あります』は、児童向けのお話を書かれていることが多いささき かつお先生が書いた、ほっこりあたたかく、せつないミステリです。
読めばきっとこのお店に行きたい、このお店で働きたい、わたしもアリサちゃんに会いたい、と思うはず。
挿絵はありませんが、読みやすい本ですので、気になった方はぜひ読んでみてください。
こちらは「夢と読書(ラクマで古本屋モドキ)」にて販売中です。
中古でも良し、安く買いたい方は⇧からどうぞ。