「彼処は夏と秋がすれ違う玄関です。」――少年アリス(長野まゆみ)
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こんにちは、「夢と読書 一期一会BOOKS」の萌菜花です。
今回ご紹介する本は「少年アリス」です。
きれいな表紙とタイトルに惹かれ、この本を選びました。
宮沢賢治さんの「銀河鉄道の夜」や萩尾望都先生などの作品、「不思議の国のアリス」が好きな方におすすめの一冊です。
本の情報と本の内容、感想を本の中の言葉を引用しながら書きたいと思います。
気になる方はぜひ、最後まで読んでください。
なお、こちらは「夢と読書(ラクマで古本屋モドキ)」にて、実際に販売中の商品になります。
この本について
少年アリス
著者:長野 まゆみ
定価:369円+税
1992年7月4日 初版発行
(河出文庫)
長野 まゆみ(ながの まゆみ)
1959年、東京都生まれ。
女子美術大学卒業後、デザイナーを経て、『少年アリス』で第25回文藝賞を受賞する。
本作は十代の女性を中心に熱狂的な支持を得てロングセラーとなる。
その他に『野ばら』『天体議会』『ことばのブリキ罐』などがある。
どんな本?
月夜に照らされた石膏の卵を眺めていたアリスは、学校に忘れ物を取りに行くという蜜蜂とその飼い犬である耳丸とともに、夜の学校へ忍び込む。
無事に教室で忘れ物を発見し、探検をはじめたふたりと一匹は、理科室で不思議な授業を目撃する。
『烏瓜の灯』『夜合樹(ねむ)の木』『アルコール洋燈(ランプ)』など、長野まゆみ先生独特の美しい単語がちりばめられた珠玉のファンタジーです。
どこが良かった?
不思議な世界観ときれいな言葉遣いが楽しめる
長野まゆみさんの書く文章は、なんといっても古い言葉を効果的に使った独特の美しさが魅力です。
詳しくは高山 宏さんによる解説を読んでいただきたいのですが、萩尾望都先生などの女性作家が、「少年」を主人公にしたお話を描かれていたことも例に挙げられていて、そんな現代ではないファンタジックな世界観が描かれています。わたしは「銀河鉄道の夜」のようだと感じました。
主人公が「アリス」という名前なのもあり、解説の中には何度もルイス・キャロルの「不思議の国のアリス」と比べられています。話をさっと読むと、一度では理解が追いつかない部分も多いかもしれません。ですが、解説を読むと少し世界観がつかめます。
そして、文字を追うだけでうっとりとしてしまう言葉遣いと、絵本や御伽噺のような世界観に、気づけば最後まで一気に読んでしまいました。
何時の時代も「夜の学校」は魅力的
この本自体はなんと、30年以上も前の本ですが、古さを感じさせません。
いつの時代も夜の学校に忍び込むって、一度はやってみたいですよね! 『少年アリス』では主人公のアリスと友人の蜜蜂、蜜蜂の飼い犬である耳丸が夜の学校に忘れ物をとりに忍び込みます。セキュリティとか、そういう現実的な部分は気にしてはいけません。舞台は夜の学校ですが、ホラーの要素はなくお話が進んでいくので、怖いのが苦手な方でも大丈夫。
お話の中であっさりたどり着いた教室よりも重要になってくるのが、中庭と理科室と図書室。あ、それから図工室。中庭では中身をくりぬいた烏瓜に蛍星を捕らえて入れて提灯にするために訪れます。理科室はふたり+一匹が不思議な授業を見てしまう場面、図工室はアリスが他の子どもたちと一緒に月や星を作る場面で、図書室は最後の方に出てきます。昼間はそれらの教科を習うための場所ですが、夜になっただけでその部屋の持つ役割が変わります。それは日常では味わえない、本でしか体験できないことです。
登場人物の少なさがシンプルで覚えやすくて良かった
わたしは登場人物の名前をなかなか覚えられないまま読んでしまうのですが、このお話で名前がついているのはふたり+一匹だけ。簡単に覚えられるので、お話に集中できます。名字も出て来ないことが逆に世界観を際立たせていて素敵です。わたしのようにたくさんの登場人物を覚えるのが苦手な方や、人間関係を把握するのが苦手な方にもおすすめです。ただ、少し想像力が試されます。
とはいえ、お話もそこまで難しくはないので、独特の言い回しや設定に慣れればシンプルなお話だと思います。
まとめ
夜の学校に少年ふたりと一匹が忍び込む、ただそれだけのシンプルなお話です。
ファンタジーや美しく古風な言葉遣い、星や月や白鳥が出てくる世界観が好きな方は、ぜひ一度読んでみてください。