夢と読書 一期一会BOOKS

日々読んだ本をご紹介。「夢と読書(ラクマで古本屋モドキ)」にて販売中です。

”「死ぬまで忘れない」”――昨夜のカレー、明日のパン(木皿 泉)



 こんにちは、「夢と読書 一期一会BOOKS」の萌菜花です。

 

 今回ご紹介する本は「昨夜のカレー、明日のパン」です。

 本の情報と本の内容、感想を本の中の言葉を引用しながら書きたいと思います。

 気になる方はぜひ、最後まで読んでください。

 

 なお、こちらは「夢と読書(ラクマで古本屋モドキ)」にて、実際に販売中の商品になります。

 

 

 

 

 

この本について

 

 

 昨夜のカレー、明日のパン

 

 作:木皿 泉

 定価:1,400円+税

 2013年4月30日 初版発行

 (河出書房新社

 

 木皿 泉(Izumi Kizara)

  1952年生まれの和泉 努と、1957年生まれの妻鹿 年季子による夫婦脚本家。

  はじめて手掛けた連続テレビドラマ「すいか」(2003年)で第22回向田邦子賞などを受賞。続く「野ブタ。をプロデュース」(2005年)で第47回ドラマアカデミー賞最優秀作品賞等6部門受賞。

  他にもラジオドラマ、アニメ映画、舞台脚本などでも活躍している。

  本作がはじめての小説である。

 

どんな本?

 

 7年前に夫の一樹を亡くしたテツコは、今でもギフ(義父)と同居している。

 隣に住むムムム、恋人の岩井さん、山ガールの小川さん、一樹の従弟の虎尾とそれぞれやりとりする中で、一樹の死をゆっくりと受け入れていく。

 穏やかで何気ない日常から、幸せや人の死について考えさせられる、そんな本です。

 

読んでみてどうだった?

 

 人が死ぬことについて考えさせられた

 

 一樹さんが亡くなって、すでに7年が経っていて、それでもテツコはギフと同居しています。それは、まだ一樹さんが亡くなったことを受け入れられていなかったから。

 テツコはどうしても納得ができなくて、7年経っても大事に一樹さんの小さな骨を持っています。

 ギフは「『人が死んだら星になる』、という話が信じられない」と言っていました。

 ギフの場合は気象予報士の仕事をしているためだ、と言っていましたが、それを含めても、息子はまだそこにはいない、と思っていたのではないでしょうか。

 

 そんなふたりは、でも決して、悲観的に生きているだけではありません。

 テツコには恋人がいますし、ギフが定年が近いからと趣味を探している。

 そんな風に日常を、穏やかに過ごしているのです。

 ただふたりとも、一樹さんと3人で住んでいた家から離れられないだけで。

 

 テツコと一樹さんの結婚生活は、あまりにも短いものでした。

 時間軸は7年後で、もうそこに、一樹さんはいない。

 ですから、テツコやギフや周りの人たちの言葉で、一樹さんの人となりを想像するしかなく、また、大切な人が亡くなるとはそういうことなのだ、と読みながら考えていました。

 

 

 一樹さんについては想像するしかなかった

 

 前述の通り、一樹さんはもう亡くなっています。

 ですから、作中の手がかりを元に、一樹さんの人物像を探すしかないのです。

 

 たった25歳で、妻と父を残して亡くなった一樹さん。

 

 いつテツコと出逢ったのか? どんな性格だったのか?

 そういう情報を、ひとつひとつ、登場人物の言葉から探していく。

 その答え合わせは最後に出来ますので、ぜひ最後まで読んでみてください。

 

 

 幸せについて考えることができた

 

 わたしは読書をするときに、手書きで気になる単語や気に入った文章をメモしながら読んでいるのですが、一樹さんのお母さん、ギフの妻である夕子さんが幸せについて語っていた数行は、全部メモをとりました。

 

 四季を感じながら、その季節のものを食べて、小さな幸せを毎日感じる。

 同じ生活が出来ればどんなに幸せか、と気づいたら全文書き写していました。

 

 そうした愛情が十分に与えられていたから、きっと、一樹さんはとても優しい人だったと思うのです。

 

 

 作中に書かれていない未来や過去を想像した

 

 読んでいて何度も思ったのが、どうして一樹さんが生きていないのか、ということ。

 幸せで何気ない、穏やかな日常があったとしか、想像が出来なかったのです。

 だからこそ余計に悲しくて、切なくて、どうしようもなくて。

 

 そしてもう一つ想像したのが未来のこと。

 これはネタバレになりますのでここには書きませんが、きっとそういう未来になるだろう、という。

 

 あ、あともう一つあるのが、一樹さんとテツコさんが結婚するまでの想像です。

 どうやって出逢ったのか、はちゃんと作中で描かれていますので、ぜひ。

 そこを読んではじめて、救われた気がしたのです。

 

まとめ

 

 なんだか美味しそう、という単純な理由で購入した本でしたが、内容は淡々としているのにあたたかくて、切なくて、だけど最後には救われる、そんな本でした。

 悲しいのだけれど、決してしんみりとはしない。

 そんな良い塩梅ですので、ほっこりもしたいしとても悲しくはならない切なさを味わいたい、そんな方におすすめの一冊です。

 

 難しい単語は特に出ませんので、学生の方にも読みやすいと思います。

 

 ぜひ最後まで読んでください。

 

 

 

 

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