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【感想】『真夜中の植物レストラン』春田 モカ(スターツ出版文庫)

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 8月から観葉植物を育て始めました。

 最近は野菜も値上がりしていて、いっそ再生栽培でもはじめようかな(すでに豆苗は実行済み)……と思っていたところで、この本に出会いました。

 

 その名も、『真夜中の植物レストラン』。

 

 こんにちは。

 「夢と読書 一期一会BOOKS」の萌菜花です。

 

 今回わたしが読んだ本は『真夜中の植物レストラン』春田 モカスターツ出版文庫)です。

 

 みなさんはごはんをいっぱい美味しそうに食べる女の子は好きですか?

 

 このお話は、真夜中に主人公の花井 菜乃(はない なの)があまりの空腹で倒れそうになったところを、エリート上司である草壁 爽(くさかべ そう)さんに助けられ、草壁さんがこっそり営む『植物レストラン』で食事を振る舞ってもらうところからはじまります。

 この『植物レストラン』、元は花屋さんで、建物の外側は緑に覆われていて、店内も植物であふれていて、まるで植物園のよう。

 カウンターには小さい多肉植物が、天井からはハンキングバスケットに入った花が吊るされていて、壁は背の高い植物が覆っています。

 そこで出てくる食事は、裏庭で育てた野菜たちを調理したもの。

 そしてその野菜たちを育てているのは、上司でありイケメンのエリートSEである草壁さん

 

 そんな素敵なこのお店、実は、金曜日の深夜、限られたお客様しか入ることができないレストランです。

 

 もう、この導入部だけでこころ惹かれますよね!

 

 主人公の菜乃は大盛りをぺろりと平らげてしまう女の子で、食べ物が大好きな反面、たくさん食べてしまうことにコンプレックスを抱いています。

 

 今回は、このおしゃれーなお店の雰囲気とイケメンの上司兼店主が作る料理に癒され、そして菜乃をはじめとした登場人物のコンプレックスと向き合うお話『真夜中の植物レストラン』を紹介します。

 

 

 

 

『真夜中の植物レストラン』のあらすじ

 

 悪いことが重なり、食事を忘れて遅くまで働いていた花井 菜乃(はない なの)は、仕事終わりの真夜中、あまりの空腹に倒れそうになる。

 そこを偶然通りがかったイケメン上司――草壁 爽(くさかべ そう)に助けられ、連れてこられた先は、彼が金曜日の深夜にだけオープンしている『植物レストラン』だった。

 花屋を改装した店は外も中も植物に溢れ、庭でできた取れたての野菜で作られる料理に、菜乃は癒され、居心地の良さを感じるようになり――。

 ジェノベーゼパスタ、ボリュームサンド、完熟トマトカレー、大葉味噌にぎり……真夜中の料理が人をつなぐ、美味しさいっぱいたまにラブありの癒し系ラブコメディ。 

 

『真夜中の植物レストラン』と春田 モカ先生について

 

 

 『真夜中の植物レストラン ~幸せを呼ぶジェノベーゼパスタ~』

 

 定価:580円+税

 2020年2月28日 初版第1刷発行

 (スターツ出版株式会社/スターツ出版文庫)

 

 春田 モカ

 

 埼玉県出身、都内在住。

 2008年にKADOKAWAよりデビュー。

 2014年には『呉服屋の若旦那に恋しました』で第2回ベリーズ文庫大賞を受賞。

 近著に『いつか、君の涙は光となる』『それから、君にサヨナラを告げるだろう』『呉服屋の若旦那と政略結婚いたします』(いずれもスターツ出版)などがある。

 2022年に刊行された『本能レベルで愛してる~イケメン幼なじみは私だけに理性がきかない~』は漫画化され、noicomiにて連載中である。

 現在、小説サイト『ノベマ!』『ベリーズカフェ』にて執筆活動中。

 

 公式サイト『Skist』

 公式X

 

『真夜中の植物レストラン』の感想

1 『植物レストラン』の料理がどれも美味しそうで癒される!

 

 わたしは料理が出てくる本が大好きでよく読んでいるのですが、この本もまぁ~~魅力的な料理がたくさん出てきます。

 

 まずはお腹が空きすぎて倒れそうになっていた菜乃を救ったジェノベーゼパスタ。目の前でささっと”イケメンエリート上司”が作ってくれるパスタ、しかも使っているバジルは庭で育てたもの、そら美味しくないわけがない!

 その後も完熟トマトカレー、トウモロコシ天、枝豆チーズトースト……と、各話ごとに季節の食材を使った料理が出てきて、とても心惹かれました。

 

 なかでも、わたしが真似したいなと思ったのが、炙りサーモンアボカド丼。一見おしゃれで難しそうですが、実は料理の工程がそこまで難しくなく、実際に作って食べたいと思いました。と、いうのも、料理初心者の菜乃が草壁さんに教わって作れたくらいなので、ふだん料理をしない人でも作ってみたいかも! と思える料理があるかもしれません。

 

 こういった料理の出てくる本は、食べたい、作ってみたい、と思える料理がひとつは見つかるので、日々の献立に困っているわたしはすごく助かります。それに、調理の工程も説明されているので、真似しやすいのもいいなと思いました。

 実際に、わたしは作中に出て来たピザを真似してピザトーストを作りました。

 

 食べるのが好きで料理は初心者な菜乃と、趣味が高じてお店を開くくらい料理上手な草壁さん。料理が上手な人も初心者も出てくるので、どちらかに共感でき、読みやすい本になっています。

 作中で、菜乃が「アボカドの皮をうまく剥けない」と話しているくだりはすごく共感しました。

 

 この本では、そういった食べたくなる・作りたくなる料理がたくさん出てきて、なおかつ植物いっぱいの空間で提供されるので、読みながら想像するだけで癒されます

 

2 主人公・花井 菜乃のコンプレックスは「大食いであること」

 

 菜乃は友達や恋人の前では大食いであることを隠していましたが、「本当の自分を見せたい」という考えから思い切って元彼にカミングアウトし、お腹いっぱいにステーキを食べて見せました。

 

 すると、翌日『あんなに食うのは女じゃない。正直引いた。別れよう(笑)』というメッセージが届いたのだ。

 

 わたしはこの一文を読んで、思わず「ひっっっっでぇ」と口に出してしまいました。

 美味しそうにいっぱい食べる女の子ってわたしはとても好感がもてて、とっても魅力的なのに、人によってはそれを「女の子らしくない」という人もいます。逆に、男性でも小食な人はいますよね? 登場人物に対して反感をもっても仕方がないのですが、この元彼、なかなかヤバい奴で、自分から別れたにもかかわらず、ちょいちょい菜乃に絡んでは困らせます。

 

 逆に草壁さんはいっぱい食べる菜乃に対して、はじめから山盛りのパスタを出してくれます。口調は割と辛辣ですが、その後も料理を教えてくれたり、食欲がない菜乃を心配したりと、菜乃の「本当の姿」を受け入れてくれているんですよね。

 

 草壁さん以外にも菜乃の「本当の姿」を受け入れてくれる人が現れるのですが、それはぜひあなたが読んで確かめてみてください。

 

 本当の自分が出せないのはすごく苦しいです。

 でも、頑張って本当の自分を見せたのに、それを否定されてしまうのも、とても苦しいです。

 しかし、みんながみんな、自分を受け入れてくれるわけではないのです。

 

 ですから、本当の自分を受け入れてくれる、それも好意的に思ってくれる人が現れたというのは、その後の人生を変えてしまうくらい大きな出来事です

 だからこそ、菜乃は『植物レストラン』に居心地の良さを感じるようになったのです。

 

3 「食べることは生きること」美味しいと思えたら、きっと大丈夫

 

 元彼に別れ話を笑われ、仕事では失敗をし、落ち込んでいた菜乃に、草壁さんは言います。

 

「花井、食べることは生きることだ」

 

「クソ元彼ごときに言われたクソしょうもないこと、いつまでもクソ引きずってクソ腹空かせてる暇があったら、好きなもの好きなだけ食ってバカなこと考えずに寝ろ」

 

 こころが弱くなると、食欲が落ちてしまうこと、ありませんか?

 わたしはショックな出来事があったとき、1か月くらい食欲が戻らず、食べ物が美味しいと思えず、それでも何かを食べなければ体がもたない、とにかく食べられるものを口にしていた時期がありました。あのときは栄養ゼリーさえ半分しか飲むことができないくらいのあり様でした。

 そんなときにこの本に出会っていたら、もっと早く食べられるようになっていたかもしれません。

 

 自分の身体を作るのは、自分が口にしたものです。

 ですから、草壁さんが言うように、「食べることは生きること」そのものなのです

 

 このシーンを読んだとき、わたしは小川 糸さんの『海へ、山へ、森へ、町へ』(幻冬舎文庫)を思い出しました。全く同じ言葉が出てくるのです。

 この本は、作家の小川 糸さんが、日本や世界の美味しいものに出会うエッセイで、自然の中で食材を育てることの過酷さや、命をいただく尊さ、料理に対する思いやりが感じられる一冊です。

 誰かに料理を作るのは、その人の尊い命につかえること。

 そして生きるとは、どんなことがあっても毎日同じようにご飯を食べて呼吸すること。

 それはどの世界でも同じなのだと思いました。

 

 この『植物レストラン』は、コンプレックスと向き合うことだけではなく、食べることで心身を癒し、強くし、また食が人と人とをつなぐのだということを教えてくれます。

 

 菜乃は、この植物レストランで美味しく食事を食べるだけでなく、料理を作ったり、野菜を育てるのを手伝ったり、色々なお客様と出会うことで変わっていきます。

 読んでいくとわかるのですが、菜乃って本当は強くて優しい子なんです。ただそれが出せなかっただけ。そんな一面を知ると、どうか幸せになってほしい、と願わずにはいられないのでした。

 

 

  

春田 モカ先生の他のお話は? 代表作を紹介

 

 春田 モカ先生の本を読んだのはこの『植物レストラン』が初めてですが、他にも男女の甘酸っぱい恋愛を描いたお話をたくさん書かれています

 

 たとえば、現在コミカライズが連載中の『本能レベルで愛してる~イケメン幼なじみは私だけに理性がきかない~』

 恋愛に鈍感な女子高生・千帆は、イケメンでクールな幼なじみ・紫音とフェロモンで惹かれあい、グイグイ迫ってくる紫音に理性と本能が交錯しドキドキが止まらない……⁉ というお話です。

 

 また、2014年に第2回ベリーズ文庫大賞を受賞した『呉服屋の若旦那に恋しました』は、現在『呉服屋の若旦那と政略結婚いたします』に改題され、新装版が発売されています。

 こちらは東京から地元の京都に戻った衣都が、8歳上の幼なじみで老舗呉服屋の跡取りの志貴と政略結婚をすることになり、穏やかな結婚生活を過ごすうちに、隠された真実を知る――という切なくも優しい一途な愛のお話です。

 

 このように、春田先生が書かれているお話は、本来恋愛やラブコメ、オフィスラブが多く、今作の『植物レストラン』は、先生の本の中では珍しい、「食」を題材にした意欲作です。そのため、もしかすると他のお話に比べたら恋愛要素は薄いのかもしれません。

 わたしは春田先生の本ではじめて読んだのがこの『植物レストラン』だったので、もっと恋愛要素の強いお話も読んでみたいなと思いました。たまにはキュンキュン……したいです!

 

 

 

 

『真夜中の植物レストラン』のまとめ

 

 外も中も植物にあふれた癒しの場所で、イケメン上司の作る料理が食べられる、金曜日の深夜にだけオープンしている特別な場所、『植物レストラン』。

 大食いであることをコンプレックスにしていた菜乃は、この場所で料理を食べたり、作ったり、色々な人と出会うことで変わっていきます。

 否、その自分こそが「本当の自分」で、居場所が見つけられていなかった菜乃は、本当の自分を隠してしまっていたのかもしれませんね。

 

 

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