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こんにちは。
「夢と読書 一期一会BOOKS」の萌菜花です。
今回わたしが読んだ本は『妖怪アパートの幽雅な日常①』です。
こちらは2003年に講談社YA!ENTERTAINMENTから刊行されたシリーズもので、漫画・アニメ化もされた大人気シリーズです。
「講談社YA!ENTERTAINMENT」の「YA」は「ヤングアダルト」の略で、文字通り「児童文学と文学一般の間」をさします。
学生の頃、図書室で読んだ人も多いのではないでしょうか?
さらにこの本は2008年に講談社文庫より待望の文庫版が刊行されました。
学生だった頃、講談社YA!ENTERTAINMENTといえば『妖怪アパートの幽雅な日常』『No.6』『都会のトム&ソーヤ』を読んでいました。
『No.6』はすでに文庫版を買っているので、また読みたいなと思っています。
『妖怪アパート』というタイトルですけど、怖いという感じではないので、どんな方でもお読みいただけるかと思います。
個人的には漫画のほうが『全部見えちゃう』から、怖いような気もします。
あらすじ
中学1年生のときに両親を事故で亡くした稲葉 夕士(いなば ゆうし)は、4月から高校生。
春から高校の寮に入るはずだったが、その寮がなんと全焼してしまい、入れるのは半年後となる。
その入寮までの半年間を、「妖怪アパート」で過ごすこととなる。
数人の住人と、個性豊かな物の怪たち。
「日常」とは?
「普通」とは?
いままでの常識は通じない「妖怪アパート」での日々は、夕士が忘れようとしていた様々な感情を呼び覚ましていく。
漫画化・アニメ化もされた大人気シリーズの第一巻。
本と著者について
定価:448円+税
2008年10月15日 第1刷発行
(講談社文庫)
香月 日輪(こうづき ひのわ)
和歌山県生まれ、大阪府在住。
『ワルガキ、幽霊にびびる!』で作家デビュー。同作は日本児童文学者協会新人賞を受賞している。
本作では産経児童出版文化賞フジテレビ賞を受賞。
そのほか、本作と同じ世界観だという「地獄堂霊界通信」シリーズや、「大江戸妖怪かわら版」シリーズなどがある。
講談社YA!ENTERTAINMENT公式サイトでは、「香月日輪の幽雅な日常」を連載中。
感想
1 るり子さんのごはんが……食べたい‼
「妖怪アパート」こと寿荘の賄いさんである、るり子さんが作るごはんがめちゃくちゃ美味しそうなのです……!
本来、妖怪にまつわるお話を感想の最初に持ってくるべきだと思うのですが、わたしはあえてるり子さんのごはんについて語りたい!
なぜなら妖怪とか夕士くんのこととかそっちのけで、一番最初にこの本について思い出したのが「ごはんが美味しそうだった」ということでした。
本編や主人公や周りの人たちや個性豊かな妖怪たちを差し置いて、ごはんというのが本当にわたしらしい。
るり子さんが作るごはんは和食が多く、どれもこころがこもっていて、思わず「住みてぇ……!」と思ってしまうほど。
なかでもいちばん食べたいと思ったのが、最初に夕士くんが食べたトンカツ。
夕士くんは、
声にならなかった。口の中でとろけるようなトンカツ。だしのよくきいた大根とアゲの味噌汁は、まるで料亭で出されるもののように上品で味わい深かった。
と言っていました。食べたい。はぁ食べたい。飯テロもいいところ。
それから、ごはんはそのときの感情によっても味の感じ方が変わってくると思うのですが、いままで気を張って生きてきた夕士くんが、「もう少し力を抜こう」と思えたときの朝ごはんがまーー美味しそうで。
朝からアジの開きとじゃがいもと玉ねぎの味噌汁とひじきとベーコンエッグ出てきたらもうずっと住んでいたい。
しかもこの寿荘、なんと家賃が光熱費・水道代・賄い込みで2万5千円。
しかも地下に温泉がある。
いや破格すぎ。
ちょっと物の怪や幽霊が見えるようになったり、怖い思いをすることもあるのですが……全く問題ないですよね⁉
ちなみにこのおいしそうな料理の数々に、わたしのなけなしの料理欲が開花しました。
春っておいしい野菜がいっぱい。るり子さんのおかげで料理が楽しい。本ってすごい。
2 「普通」とは、「日常」とは
主人公の夕士くんは、3年前に両親が他界しており、天涯孤独の身。
さらにひょんなことから「妖怪アパート」と呼ばれる特殊な環境で過ごすことになります。
たしかにそこは、幽霊も物の怪も神さまもいる。
そして人間も。
たまに危ない存在も来るけれど、みんな常識がある。
ちょっと個性が強いだけで、ある意味「普通」とも言える。
対してクラスメイトの田代くんは、ちょっと道を踏み外しかけている。
ちょっと悪ぶった友達とつるんでいて、悪いことに手を染める。
夕士くんの周りには幽霊や物の怪や神さまがいるけれど、それが「普通」の日常。
だから、「普通」なんてものはひどく曖昧なもので、人それぞれなのだと思います。
それを「普通」だと思ったら、周りがどんなに「普通でない」と思っても、本人にとってはそれが普通。
今回画像に親子+犬の写真を使っているのですが、これは本作に出てくる赤ちゃんの幽霊「クリ」と犬の幽霊の「シロ」とお母さんの幽霊をイメージしてみました。
こうだったらよかったのにな、と思って。
クリは赤ちゃんの幽霊で、赤ちゃんだから無条件にかわいくて、みんなから可愛がられています。
犬の幽霊のシロは、そんなクリを守るように、いつもクリのそばにいます。
しかし、クリもシロも天国に行くことができません。
その理由はぜひ本編を読んでほしいのですが、クリのお母さんが思い出したようにクリの元へ――妖怪アパートへ訪れるのも含めて、「日常」なのです。
夕士くんの言葉を借りると、どうしようもないことでも受け止めて、感情に表すことで「生きる」ことができて、世界が広がる。
いい人もいれば、悪い人もいる。それが普通。
世の中にはその「普通」になれずに苦しんでいる人がたくさんいると思います。
でも、「普通」なんてそもそも人によって違うし、変わっていくものなので、未来を見て、夢を描いて、成功と失敗を繰り返しながら生きればいい。
それは自分次第で変わるもの。
いろいろな人がいるから、いつかは自分に合う人だって、現れるはず。
なんだか、そんなことを、この本から学んだような気がします。
3 本音を話せる「友達」と、見守ってくれる「大人」がいるひとは強い
両親を早くに亡くして、寂しい思いを抱えている夕士くんですが、周りの人にはすごく恵まれています。
高校が離れてもマメに手紙でやりとりをし、会いに来てくれる親友の長谷くん、妖怪アパートに住む大人たち。
それぞれこう……不真面目な要素とか、変わり者だったりするのですが、根はみんな「いい人」なんですよね。
そういった存在が夕士くんの周りにいて良かったな、とすら思ってしまいます。
まだたった一巻だけでは彼らの謎や魅力はわかりきらないけれど、それは続巻に期待します!
当時たぶん完結までは読めていなかったと思うので、全部読めたらいいなと思います。
全10巻+1巻あるみたいですけど!
まとめ
大人も子どもも読みやすい『ヤングアダルト』という種類の、ほっこりしつつときに切なく悲しなる、でも前向きに生きたくなる、そして妖怪アパートに行きたくなる! そんな感じのお話です。
ほんっとに永住権ほしい。
気になった方はぜひ読んでみてください。
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