こんにちは、「夢と読書 一期一会BOOKS」の萌菜花です。
今回ご紹介する本は「塩の街」です。
言わずと知れた名作ですが、コロナ禍の今こそぜひ読んでほしい一冊です。
本の情報と本の内容、感想を本の中の言葉を引用しながら書きたいと思います。
気になる方はぜひ、最後まで読んでください。
なお、こちらは「夢と読書(ラクマで古本屋モドキ)」にて、実際に販売していない商品になります。
使用感がすごいのと、経年劣化で帯の色がカバーのそでに色がついてしまっていたりして、これは売りたくないなぁと判断したためです。
ですが、「読み終わった本は売る」というマイルールに基づき、こちらは古紙回収へ持っていきます。そこでポイントが貯まるとクオカードがもらえるので、それもいつかは本代になります。
この本について
著者:有川 浩(ひろ)
定価:667円+税
平成22年1月25日 初版発行
(角川文庫)
有川 浩(ひろ)(Arikawa Hiro)
高知県出身。
「塩の街 wish on my precious」で第10回電撃小説大賞し、2004年デビュー。
本作を含め、後に「自衛隊三部作」と呼ばれる「空の中」「海の底」をはじめ、「図書館戦争シリーズ」や「植物図鑑」、「阪急電車」など、数々のヒット作があり、数々の作品がアニメ化や映画化、コミカライズになり、多くの人から愛されている。
※現在は「ひろ」表記ですが、当時は「浩」ですのでそのまま表記します。
どんな本?
突如世界の各地に降ってきた隕石――塩の塊によって、徐々に人が塩の結晶となりやがては死に至る「塩害」により、多くの人が亡くなり、首都はもはや塩の柱のみが林立する死の街になり果てていた。
そんなこの世の終わりのような場所で、秋庭と真奈は出逢った。
いつ、どちらが先に塩を吹きはじめるかわからない。
そんな極限の状態で、ふたりは生き残ることが出来るのか――。
好きな人を失う代わりに世界が救われるのと、世界が滅びる代わりに好きな人と最期を迎えられるのと、自分ならどっちを選ぶかなぁ
と思ったことによって生まれた、有川 浩(ひろ)さんのデビュー作です。
読んでみてどうだった?
コロナ禍の今だからこそ考えさせられた
突如として謎の巨大な塩の結晶が地球の外から降ってきたことによって、首都は大ダメージを受けます。中枢は麻痺し、電波は通じず、店は荒らされ、家は荒らされ――。
そして、人はやがて塩の柱になってしまう。
それは未知のいわば病気であり、極限の状態。
読んでいて、あれ、なんだか今に通ずるところがあるぞ、と感じたのです。
話の途中で出てくる「野坂さん」はこの塩害を期に結婚をしました。
そのお話は番外編に入っていて、とても素敵なお話ですので、併せて読んでいただきたいです。
要するに、もし感染するような病気だったとしても、一緒に居たいか、ということ。
そんな相手が見つかって、結婚出来るというのは本当に幸せなことです。
――一方で大切な人を失った人も多くいる中で。
男女の考え方の違いについても考えさせられた
正直どっちもわかるなぁ、と思ったのですが、この本をはじめて読んだ学生の頃は、もっと秋庭さんにきゅんきゅんしていたと思います。当時は真奈ちゃんのほうが年が近かったですから。
話が終盤に差し掛かり、人々の命運のためにも命を懸けようとする秋庭さんと、それを止めたい真奈。それはさながら、戦地に夫を送り出す妻のような心境だなぁとわたしは思いました。
大事な人を守るために命を懸けることを選んだ秋庭さんと、大事な人だからこそ行ってほしくない真奈。それがまた切ない。
そのあたりのシーンでとある人物が言った、
「愛は世界なんか救わないよ。賭けてもいい。愛なんてね、関わった当事者たちしか救わないんだよ。救われるのは当事者たちが取捨選択した結果の対象さ」
と言う言葉が好きです。
世界を救う勇者の話はたくさんあるけど、それは勇者の大切な人がいる世界を守りたいからなのでは、と思ったりして。
それから野坂さんの夫が言った、
「俺だって同じことするよ。――由美」
という言葉にも、グッと来たのでした。
どちらの考えも悪くないんです。
「どちらが正しいか」なんて訊かれたら、わたしは「どちらも正しい」としか言えません。彼の視点から見れば、それは正しいし、彼女の視点から見れば、それも正しい。
ただ大事な人を大事に思っている、ただそれだけなのですから。
命の重さについても考えさせられた
人間は強いのか弱いのか、日々ニュースで流れる顔も知らない誰かの訃報より、周りの人を失う方がずっと悲しいのです。
たくさんのひとが亡くなっていて、それを悲しめないのは不公平ではないのか?
実際問題、そんな知らない人の死まで悼んでいると、正直こころが持たないだろうと思うのですが、この話の中ではたくさんの人が亡くなっていて、その中には当然いい人も『悪い』と言われる人もいて。
善人だろうが悪人だろうか命の重さは等しく同じ、な、筈、なのです。
けれど、常識やルールが通用しない「塩の街」の世界では、命の重さでさえも変わってしまいます。
そんな世界をもし生きた時、わたしは、どう思うだろう。
あなたも一度、この本を読んで考えてみてください。
まとめ
有川 浩(ひろ)さんのデビュー作、「塩の街」でした。
今日たまたまTwitterでそんな単語を見つけて、読み返してみました。
大人になってから読み返すと、学生の頃とは違う感想を抱くことに戸惑いつつ、自分ならどうするだろう、どう思うだろう、と考えさせられた一冊でした。
あ、あまり触れていませんが、これは恋のお話です。
ファンの中では秋庭さんはなかなか人気があるようで、わたしも何度かひーっと言いました。でももう彼と同じ年くらいですので、今。そんな今ならわかります。
30手前でこんな大人びててなんでも出来る不器用な男は、そうそういないよ――ってね。
また、作者である有川さんは、「大人のライトノベル」としてこのお話を書かれたのだとか。角川書店から出ている「塩の街」はほとんど挿絵もありませんが、確か電撃文庫で出た時の方は違ったはず。
それでも小説はちょっと、という方にはノベライズもされていますので、ぜひマンガから読んでみてください。大体流れがわかっていると、小説が苦手でも原作が読みやすくなりますよ。